地方自治体が行なう胃がん検診に、「バリウム検査」より確実に高い発見率を誇る「内視鏡(胃カメラ)」による検査が選択肢に加わる見通しだ。そして胃カメラは苦しいというのはもはや過去の話だ。
胃カメラには「経口」と「経鼻」の2つがある。医療機関を選ぶ時には、どちらの検査を行なっているかを事前にチェックしておくことも必要となる。経鼻内視鏡のほうが検査の際に苦しくない。その一方で北青山Dクリニック・阿保義久院長はこういう。
「経鼻内視鏡も進化を続けていますが、口から挿入する内視鏡は直径約1センチで経鼻内視鏡の倍ほどの太さがあります。違和感は大きいが、麻酔をすることで苦痛なく実施できるので、当院では経口内視鏡を採用しています。超広角レンズを採用していたり、拡大ズーム機能があることが多く、病変をより詳細に観察できて検査の精度はより高くなります」
楽さと精度のどちらを選ぶかは個人の考え次第だ。
また、胃カメラのリスクとして、「出血や穿孔(せんこう・臓器を突き破ること)といった偶発症(事故など)が起きている」(胃がん検診に詳しいジャーナリスト・岩澤倫彦氏)ことも知っておくべきだろう。
国立がん研究センターのガイドラインにも、偶発症の発症率は10万人中5.0人とある。ただし、バリウム検査による偶発症(誤嚥も含む)の発症率は10万人中37.7人となっている。新潟市では、9年間で23万4603件の内視鏡検査が行なわれたが、偶発症による死亡例の報告はない。
さらには、「胃がんの99%はピロリ菌への感染によるもの。内視鏡検査の前にピロリ菌の検査を受けて、胃カメラを飲むかを判断するほうが合理的です」(前出・岩澤氏)といったアドバイスもある。
日本ではこれまで長くバリウム検査が主流だったこともあり、内視鏡検査に関する情報が十分に提供されているとはいえない。同時に、経験が豊富な医師・専門家も不足している。
内視鏡検査の普及で救えるはずの命が数多くある。自治体の検診が大きく変わることをきっかけに、胃カメラにまつわる正しい知識を身につけ、「健康で長生き」を実現したい。
※週刊ポスト2015年9月18日号