大阪で2人の中学生が殺害されたかと思えば、東京・中野では25才の女性劇団員が自宅内で全裸の他殺体で発見されるなど、物騒な事件が起きている。このような凄惨な事件に巻き込まれないように、防犯の意識を高める必要があるわけだが、その防犯の常識が変化しているという。
たとえば、“家の近くは安全”というのも古い考えかもしれない。東京未来大学こども心理学部教授で犯罪心理学者出口保行さんは、「家から100mの距離が危険」と、警告する。
「大人でも子供でも、緊張して身構えている状態だと狙いにくいし、気が緩んでいると狙われやすい。もうすぐ家だと思うと緊張が解けるので、家の近くほど襲われやすくなります。犯人は、事前に下調べをするんです。ターゲットにしている人間が、どの辺りから気を緩めるか調べている。追いかけたらどう逃げるか、逃げ道まで含めて下見をしているんです」(出口さん、以下「」内同)
中野で起きた事件は、家の中で犯人が待ち伏せしていたのではないかと推測されている。マンションなどの場合、犯人がストーカーのように入り口や敷地内までついてきて、襲われる可能性もあり、特にオートロックがついていないなど、防犯環境が整っていない住まいの場合は、家に入った直後にさっと家の中を見渡すことが重要だ。
「出かける前に、侵入者がいればすぐにわかる仕掛けをするなど、充分な注意が必要です」
防犯のためには、「○○していれば安心」ではなく、あらゆる可能性を“予想しておく”ことが重要となる。そのうえで、出口さんは「攻める防犯」の必要性をアドバイスする。
「従来型の防犯は、“検挙に勝る防犯なし”といわれ、犯罪が起きた後に検挙すればそれが抑止になると考えられていた。けれど今はそれだけでは追いつきません。犯罪者が実行に移すか迷っているときに、“やったら捕まるかもしれない”と思わせて未然に防ぐことが重要になってきます」
例えば防犯カメラの選び方、設置場所などからもよりよい防犯環境を作ることができる。
「これまでは防犯カメラでこっそりと撮影していた映像を捜査で使うことが多かったのですが、新しい防犯カメラはまったく違います。『防犯カメラ作動中』とわかる場所に書いてあったり、色もカラフルだったり、撮られているのがはっきりとわかる。基本的に、犯罪者は実行できる自信があっても捕まる恐れがあれば実行しませんので」
つまり、捕まる可能性があると相手に思わせる方法を考え、捕まる危険を犯罪者に通知することが大切なのだ。
出口さんは、誰でもできる「攻める防犯」として“挨拶”を推奨する。
「防犯における挨拶の役割は大きく、どんな小さい子からでも挨拶されると、犯人は“この町で自分の存在を認知されている”と感じます。強制わいせつ系の事件は“通勤型の事件”といわれ、自分の住んでいるエリアだと顔を知られていると思い、わざわざ遠くに“通勤”して実行します。知らない町に行って実行しようと思ったときに『こんにちは』と声をかけられたら“この時間に自分がここにいたと認知している人がいる”“覚えられているかもしれない”と思わせることができるので、犯罪抑止になります」
※女性セブン2015年9月25日号