国内

成立した安保法を今後「骨抜き」にすることはできるのか?

 安保法が9月19日未明に成立、半年以内に施行されることになった。国会前での反対デモの参加者は多い時で約12万人、参院採決が行われた18日夜は約4万人(ともに主催者発表)。警備する機動隊との揉み合いなどで逮捕されたデモ参加者は7月中旬以降で計23人に上った。

 そうした反対デモについて安倍晋三首相(61才)は19日収録のテレビ番組で「表現の自由はさまざまな形で国民は行使できます。国民の声の一つでしょう」と語っている。果たして安倍氏がいうように、反対デモは“国民の声の一つ”に過ぎないだろうか。安保法成立を受けての世論調査(共同通信19、20日電話調査)の結果はこうだった。

●安保法に反対…53.0%
●国会での審議が尽くされたとは思わない…79.0%
●安倍政権は安保法を十分に説明しているとは思わない…81.6%

 それらの数字だけ見ても、反対デモは「大多数の国民の意見」であることは明らかだ。

 学生団体「SEALDs」のメンバーは19日、安保法成立の一報を聞き、「次の試合に勝つしかない。選挙に行こう。(安保法の)賛成議員を落選させよう」と訴えた。「安全保障関連法に反対する学者の会」も20日に会見し、「これからは賛成議員の落選運動だ。自民党、公明党は戦々恐々としているはずだ」(メンバーの一人)と指摘した。

 選挙によって反対する議員が国会で過半数を占めれば、安保法の「廃止法案」を可決することができ、一度成立した法律も撤回することができる。学生団体らは今後、賛成議員の地元などで「落選運動デモ」を起こすという。

 また、憲法学の権威である小林節・慶応大名誉教授は「安保法は違憲」だとして訴訟を起こす準備を進めている。

「“憲法の番人”と呼ばれる元最高裁長官の山口繁氏が9月上旬に安保法は違憲という見解を示したインパクトは大きい。現役の裁判官も元トップの意見を真っ向から否定しにくいからだ。最高裁での判断には数年かかるかもしれないが、もし違憲判決が出れば法改正は必至だ」(政治ジャーナリスト)

 ビートたけしは安保法成立についてこう持論を述べた。

「へえ、へえって(頭下げて)、『法律で決まってませんよ』と言いながらそっと裏で汚ねえことしてたほうが日本らしい(中略)『法律で決まってんだ』って言ったって、そううまくいかないよ」(TBS系『新・情報7days ニュースキャスター』)

 もし政府が安保法で自衛隊を海外派遣しようとしても、その都度、大規模な反対運動が起きるなら、支持率低下や落選を恐れる議員たちは派遣を躊躇するに違いない。成立した法律でも“骨抜き”にすることはできるのだ。

 永田町には「国民は数か月すれば忘れる」という“伝説”があるという。反対デモの熱量をいつまでも忘れないこと、それがまずできることだ。

※女性セブン2015年10月8日号

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン