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粘膜下で転移する消化管間室腫瘍に低侵襲の単孔式内視鏡手術

 胃がんは粘膜に発生するため、胃の痛みや不快感などの自覚症状がある。しかし、GIST(消化管間室腫瘍・しょうかかんかんしつしゅよう)は胃や小腸など消化器の粘膜の下にある筋肉層から発生するので、ほとんど自覚症状がなく、健康診断で発見される例が大半だ。

 働き盛りに多く見つかり、大きくなると肝臓などに転移し、命に関わる。治療は大きさと部位によって開腹手術が行なわれる。早期の胃がんでは口から内視鏡を入れて粘膜ごと、がんをそぎ取る方法が行なわれている。ただ、胃のGISTは粘膜の下に潜っているために、口からの内視鏡では取りきれないことが多く、胃を大きく切除するケースもある。

 メディカルトピア草加病院の金平永二院長に話を聞いた。

「開腹手術で全摘すると、胃の機能が損なわれるだけでなく、腹に大きな傷が残ります。従来の腹腔鏡(ふくくうきょう)手術でもヘソを含めて4つの傷が残ります。なんとかヘソの穴一つで、内視鏡治療ができないかと考えたのが単孔式内視鏡手術です。

 私はヘソの穴に装着するエックスゲートという専用の器具を開発し、そこからカメラや電気メス、鉗子といった器具を入れて治療します。エックスゲートは、2012年に薬事法による審査に通り、多くの医師に使っていただけるようになりました」

 治療はヘソを約2.5センチ切り、エックスゲートのベースをその穴に装着する。フラップを4方向に引っ張ると、ヘソの穴が最大限に大きくなる。エックスゲートのベースに、カメラや電気メスなどの器具を入れる4つのチャンネル(入り口)がついた蓋を被せる。炭酸ガスで腹部が十分に膨らんだところで、チャンネルからカメラや電気メスなどを挿入し、健康な胃をなるべく残してGISTを切除する。

 切除したGISTは、細胞が散らばらないように袋に入れて外に出す。胃に空いた穴を筋肉ごと縫って閉じ、すべての器具を外に出した後で、ヘソも縫って終了する。

「治療が難しいのが、食道と胃の境目にできたGISTです。近くを迷走神経という胃を働かせる神経が通っているので、通常は開腹して胃の全摘になりますが、私は内視鏡による胃内手術を行ないます」(金平院長)

 ヘソを約2.5センチ切り開き、胃を引っ張り上げ、ヘソの穴に縫いつけた後で胃も約2.5センチ切開する。そこにエックスゲートを装着し、胃の中に直接、カメラや電気メスなどを入れて神経を切らないよう胃の外壁1枚残してGISTを筋肉ごと切除し、袋に入れて体外に出す。補助用に2ミリの極細の器具を入れ、切除や縫合などを行なうが補助具の傷はすぐに塞がる。

 所要時間は約2時間で、痛みも少なく、術後1週間で退院可能。この施設ではGIST治療の90%以上を単孔式内視鏡手術で行なっており、傷が残らないと患者に好評だ。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2015年10月9日号

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