国際情報

難民受け入れを美談にするメディア 「現実考えよ」と落合氏

 難民たちを乗せたボートがトルコ沖で転覆し、3歳男児を含む12人が死亡した。浪打ち際でうつぶせになっている3歳男児の遺体写真をきっかけに欧州各国は難民受け入れを拡大する方向に急転回したが、作家の落合信彦氏はこうした件を美談にするだけで良いのかと警告する。欧州各国では、「移民」をめぐる過去の諸問題も発生していた過去から落合氏が解説する。

 * * *
 フランスは、多くの移民(難民ではない)にたびたび頭を悩まされてきた。

 昨年、私がフランスを訪れ、パリ郊外のハイウェイを走っていたときに、高い壁に囲まれた地区が見えた。あとで聞くと、そこはアラブ系移民だけが住む地域で、治安が悪くフランス人はめったに入らない場所だという。壁は落書きだらけで、荒廃していた。

 人口6600万人のフランスには、400万人以上の移民がいる。うち300万人が北アフリカ出身だ。ドゴール空港ではカウンターの向こうで働いているのはほとんど北アフリカ系の事務員だった。

 2005年10月には、移民らによる暴動が起きた。パリ郊外で警察官が事件の捜査中に北アフリカ出身の若者3人を追跡中に、うち2人が逃げ込んだ変電所で感電死。「警察が追い込んだ」として、貧しい移民ら若者が暴動を起こし、それがフランス全土に広がった。3週間弱の間に1万台近くの車が焼き討ちされるなどして破壊された。

 背景には、移民らの高い失業率があった。若年層の失業率が全国平均で約20%と高かった当時、移民の多い地区ではそれを大きく上回り40%以上にも上っていた。

 今年1月に起きたシャルリー・エブド襲撃事件も、移民政策の負の側面が表出したものだ。12人を殺害した犯人は、アルジェリア系フランス人だった。事件以降、フランスではイスラム教徒やモスクなどへの嫌がらせが相次ぎ、「アラブは出て行け」などの落書きも見つかっている。

関連キーワード

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン