「箸は、毎日使う自分だけの専用の道具。たとえ家族の間であっても、人には貸さないほどなのに、自分で買わない人が多いよね」
そう言って微笑むのは、江戸木箸を作る「大黒屋」の主人・竹田勝彦さん。
以前、食器問屋に勤めていた竹田さんは、箸の持ち手部分の形が四角か丸ばかりなのに疑問を持っていた。それで独立後、もっと持ちやすい形があるのではないかと、多角形の箸を職人に注文したところ、断わられてしまった。
「2本あって、ものがつまめれば箸。四角や丸でもちゃんと食べられるんだから、それでいいだろう、ということだったのかもしれません。職人さんが作ってくれなくて。で、結局、自分で作ることにしたんです。最初は八角形の箸を作っていましたが、ある時、箸は3本指で支えるので、三角形にしてみたんです。これは持つと安定感はあるのですが、角が指に当たって痛い。そこで、五角形を作りました」
四角い角材を五角形にするのは難しく、製品として完成するまでに約3年間、試行錯誤を繰り返した。その甲斐あって、売り出すや、たちまち評判を呼んだ。
「でも、五角形の箸を持った女性から、持ちやすいけど角がちょっとキツイという指摘があったんです。だから次は、七角形に挑戦しました」
そして出来上がったのが七角箸。なかでも『極上七角削り縞黒檀』(長さ男性用24cm/女性用22cm、8640円)は、堅くて艶のある黒檀を使用。ほどよい重量感が使いやすいと好評だ。
「指のおさまりがよく、ぐらつきません。箸先まで七角形のまま一直線に傾斜し、ピタッと合うように仕上げていますので、箸をあまり開かなくても楽につまめて、手が疲れないんです」
何を使うかで料理の味わいも変わるという箸。こだわりの1膳を、探したい。
※女性セブン2015年10月22・29日号