突然の身内の不幸に付け込まれる形で、納得のいかない葬儀を強いられる遺族が急増している。NPO法人「葬儀費用研究会」の冨永達也事務長が語る。
「背景には、葬儀が閉鎖的で、不透明な料金制のもとで行なわれてきたことがあります」
東京都生活文化局の「葬儀にかかわる費用等調査報告書(2005年)」によれば、遺体搬送から火葬、会葬者の飲食、戒名などの寺院への支払いまで、葬儀の料金は、最高で807万円、最低で89万円。規模や豪華さの違いはあるにしても、同じ葬儀で約9倍もの開きがあることに驚かされる。
「葬儀の費用は業者の言い値で決まっていくことが多い。最近『直葬5万円』『家族葬9万円』といった看板をよく見かけるが、あれはあくまでも“撒き餌”です。遺影写真、供花、飲食費などは基本プランには含まれておらず、それらを頼めば追加料金が発生する。オプションとして費用を加算する材料はたくさんあります」
近年はインターネットで「格安料金」をアピールする葬儀業者も多いが、消費者センターでは「極端に安い料金設定は、オプションで高額な追加料金を取るケースがある」と警鐘を鳴らす。冨永氏が続ける。
「遺体を搬送してもらった後に気づいて葬儀業者を変えられなくなるケースも多い。病院で死亡判定が行なわれると、数時間のうちに故人を安置所に移動させなければならないが、自宅がマンションなどで安置できないことが多い都会では搬送先に困る。結果、搬送してもらう葬儀社から“ウチで預かりましょう”と声をかけられ、関連の葬儀式場に向かう。
実はこの親切に聞こえる一言が落とし穴。遺体が葬儀業者の敷地内に一旦安置されると、別の葬儀業者に頼むことは事実上不可能となります。前もって葬儀業者や遺体の搬送先が決まっていないケースではほとんどがこの流れとなり、その後は遺体という“人質”をとられ、その葬儀社が敷いたレールに乗ってお金を払うことになってしまうのです」
※週刊ポスト2015年11月20日号