現在東京都23区内でタクシーの初乗り料金は「2kmで730円」だが、近距離でも気軽に利用できるように、これを「初乗り880mで370円」する実証事件が2016年度にも行われる見込みだ。変革の兆しが見えているとはいえ、そもそもなぜ、日本のタクシーの初乗り料金はバカ高いのか。
ニューヨークの場合、320mで301円、ロンドンは259.8mで451円である。チップを含めたり、長距離になれば日本の方が安くなるが、初乗りが高いのは事実ではある。経済アナリストの森永卓郎氏は「業界と官庁の癒着」が最大の理由と指摘する。
「タクシー業界の締めつけや監督官庁の指導があり、各社がタクシー料金を自由に決められない実態がある。業界と監督官庁の“阿吽の呼吸”で料金が決められています」
近年のタクシー業界の歴史は規制強化と共にある。2000年代の小泉政権時代に規制緩和でタクシーの新規参入や増車が原則として自由化された。タクシー台数が増えて競争が激化し、売り上げが低迷したことに危機感を抱いた業界は、政治家と官僚と手を組み、規制を強める反撃に転じた。
2009年に運賃審査を厳しくする「タクシー適正化・活性化特別措置法」が成立。さらに2013年には議員立法による改正で運賃規制が強化された。
従来、タクシー料金の運賃幅(上限と下限)は国が決めていたが、事業者の経営状況によって「下限割れ運賃」も許可されていた。ところが2013年の規制強化により、運賃の下限を守らないと、車両の使用停止や事業許可の取り消しという重いペナルティが科されるようになった。
影響をモロに受けたのが「庶民の味方」である格安タクシーだ。2000年代、屋根の上に500円の行灯をつけて颯爽と登場したワンコインタクシーなどの格安タクシーは規制緩和ブームに乗って急成長したが、昨今の規制強化で「狙い撃ち」にされている。