大リーグ・レッズの超豪速球左腕アロルディス・チャップマンに、妻へのDVの疑いが浮上し、ドジャースへの移籍話は一旦宙ぶらりんになった。一般的にDVというと、ついつい夫から妻への暴力ばかりを想像しがちだが、妻からDVを受けて離婚を決意した場合、妻の暴力は離婚要因となるのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
妻の暴力行為がひどく離婚したいと思っています。ただ、妻は小柄で外面もよいため、離婚の調停委員がDV行為を認めない可能性もあるのではと心配です。そもそも妻からの暴力行為は離婚の要因となりえるのでしょうか。また、妻のDVを立証するには、普段からどのような対処を取ればよいですか。
【回答】
暴力がひどくて本当に離婚したいのであれば、女性の場合はまず、家を出て身を隠します。あなたの場合は、どうもそこまでのことは考えていないようです。暴力といってもケガをするほどのものではなく、暴力による精神的なダメージが大きいということでしょうか。
DVでは通常、医師の診断書が物をいうことが多いのですが、ケガがないのであれば、あまり期待できません。もっとも心理的な影響から精神科の先生に診てもらうようになっていれば、医師の診断書や意見書は有効です。
また、暴行時に興奮しているのであれば、気づかれないようにスマホなどで録音等ができると思います。協議離婚ができないときには、調停を申し立て、調停委員を交えて話し合いますが、あなたが録音や録画を提示できれば、同情して奥さんに離婚するよう説得してくれる可能性もあります。
それでも離婚に応じない場合、裁判離婚しかありません。その場合、暴力というだけでは離婚の理由にはならず、その結果、婚姻関係が破綻し、もう元に戻す見込みがない状態になっていることが必要です。
女性からのケガをさせない程度の暴力で、ここまでになっているとの理解を得ることは簡単ではないかもしれません。録音のほかに、DVの都度、DVに及んだ原因、DVの態様、あなたの対応などを文書に記録して残してください。こうした資料の積み重ねで、奥さんの行動が継続し、反復していることが裏付けられると思います。
もし、奥さんのDVで身体生命に危険を感じるのであれば、とにかく別居すべきだと思います。別居を続けていると、婚姻関係が破綻していることの認定を受けやすくなります。ただし、その場合でも婚姻費用の負担はあるので、生活費を渡すなど、夫としての務めを果たすことが必要です。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2015年12月25日号