「海賊と呼ばれた男」ならぬ、「海賊を改心させた男」──初競りマグロの落札で有名になった「すしざんまい(喜代村)」の社長・木村清氏についた新たな異名だ。
木村氏はキハダマグロの漁場で知られるソマリア沖で跋扈する海賊と交渉。彼らにマグロ漁船4隻を提供することで漁師に“転職”させた功績が話題になっている。海賊と接触を始めた2011年頃には年間約200件の被害が発生する国際問題となっていたが、昨年の被害は「ゼロ」だったという。
木村氏はネットメディアのインタビューに、〈自分で稼いだ金で家族を養うという誇りをもった人生にしなくちゃいかん──と、彼らと話し合った〉と振り返っているが、その功績はどの程度のものだったのか。東海大学海洋学部の山田吉彦教授が語る。
「被害が激減した理由は日本の自衛隊や各国の海軍が警備を強化したこと。丸腰同然だった商船やタンカーが、武装警備員を乗船させたり、船員が銃を持つようになるなど海賊から身を守る態勢が整ったことが大きい」
ということは、木村氏の功績は大風呂敷ってこと?
「そうじゃないですよ(笑い)。ソマリア沿岸部には飢餓に苦しむ人々が約200万人いて、彼らが海賊化したことが勢力を拡大した原因の一つ。マグロ漁船4隻なら船員は100人くらい。関連業務の従事者を含めれば1000人近くを“悪の道”から連れ戻した功績は評価されるべきです」
木村氏は海外出張中のためにコメントは得られなかったが、今日も海賊たちの“就職相談”に乗っているのかも。
※週刊ポスト2016年2月12日号