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マイナス金利の時代到来 本当に「不動産は買い時」なのか

 日本銀行のマイナス金利導入が発表され、いま不動産業界に注目が集まっている。すでに充分「歴史的低金利」と言われる昨今の住宅ローンだが、マイナス金利導入の発表を受け、大手都市銀行など主要銀行でさらなる住宅ローン金利引き下げが行なわれている。

 これまでにも2017年4月の消費税増税や2020年7月に開催される東京オリンピックなどを見越し、不動産市場がバブルを迎えているが、今回の日銀のマイナス金利導入による住宅ローン引き下げに対し、一部では「いまこそ不動産の買い時」という声も少なくない。

 だが、こうした市況のなか、「『マイナス金利導入』『消費税増税』『五輪前特需』など、様々なタイミングに『不動産は買い時』だといわれますが、はっきり言って、不動産に買い時はありません」と語るのは、1月に『不動産業界の人だけが知っている新築マンションは買わないほうがいいワケ』を上梓したスマサガ不動産代表の城戸輝哉氏。はたして、その理由とは?

「『○○の前だから買い時』『いまは○○だから買い時』というキャッチフレーズは、あくまで業界側が物件を売りやすくするためのセールストークです。たとえば以前、消費税が5%から8%に上がる直前、『消費税が増税されれば、購入金額×3%が上乗せされるから損。いまのうちに購入を!』という専門家や業者側の声が多数聞かれました。

 でも、実際に増税された後、今度は『増税特需が終って、不動産の価格が下がりつつあるので、いまが買い時です』という声が上がりました。結局、いつの時代も『不動産は買い時である』という雰囲気が作られてしまっているんですね。

 つまり、何かしらのもっともらしい根拠を持ってくることができれば、いつでも「買い時」かのように見せられるということ。常に物件を売りたがっている不動産会社の営業マンがお客さんに対して発言するなら、どんなときでも『今が買い時です』と言うに決まってますよね」(城戸氏)

 そもそも、ここ数年は、アベノミクスによる地価の上昇や、日銀による金融緩和、東京五輪開催など様々な不動産の価格が「上がるかもしれない」要因もある一方で、空き家問題や少子高齢化による人口減少など、不動産価格が「下がるかもしれない」要素も多い。つまり、どちらの立場に立ってもそれなりの根拠がある状態だと言える。

「こうした社会的背景を考えると、安易に業者や専門家の声にのみ従って、『いま不動産は買い時である』との判断を下すのは非常にリスクが高い行為です。結婚のパートナーと同じで、世間の価値観よりも自分の価値観に沿った出会いでなければ、長期的に良い関係を築くことは難しいわけです。専門家や業者の『いまは買い時ですよ』という情報に振り回されて、自分の出会うべき相手とタイミングを見失うとしたらナンセンスです」(城戸氏)

 では、物件購入を考える際、市場の動向や他人の意見を参考にすべきでない、というのなら、どんな要素を指針にして物件購入のタイミングを見極めればよいのだろうか?

「変な話ですが、自分自身の問題ですよね。『なぜその住まいを買うのか』という目的と、それに向かうために適切な資金計画。また、その住まいの資産価値をどのように維持していくかといった要素が自分のなかでしっかり固まったタイミングこそが、買い時です。つまり、その人自身が計画性をもって行動すれば、最高の買い時はいつだって作れるんですよ。逆に、計画性のない人にとって不動産というものは、どのタイミングで買ってもリスクが高いといえますよね」(城戸氏)

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