国内

「お嬢」「おじさん」と呼び合った山口組組長と美空ひばり

 今でこそ、芸能人と暴力団のかかわりはタブー視されているが、戦後のある時期まで両者は分かち難いほど近い関係だった。昭和の歌姫と全国最大の暴力団組長の交流秘話を、実録小説『神戸芸能社』の著者、山平重樹氏が紐解く。

 * * *
 戦後日本を代表する歌手、女優として、今や伝説となった美空ひばり。ひばりは1937年生まれだが、9歳からプロ歌手として活動。「天才少女歌手」と呼ばれ、戦後の焼け跡の中で日本人を励まし続けた。

 そんなひばりの“出発点”に、これまた戦後日本を代表するヤクザが関係していたことを知る人は、現在どれほどいるだろうか。そのヤクザとはほかでもない、三代目山口組組長・田岡一雄である。

 芸能興行とヤクザの関係は、歴史的にも深い。それどころか興行は、そもそもヤクザの伝統的な稼業ですらあった。山口組にも「山口組興行部」と呼ばれる組織が昔からあり、主に神戸での浪曲興行などを取り仕切っていた。

 1948年12月、この山口組興行部が影響力を持つ神戸松竹劇場へ出演するため、横浜国際劇場支配人の福島通人に連れられて、母・加藤喜美枝と神戸の田岡邸へ挨拶に訪れたのが、ひばりと田岡の出会いだったとされる。ひばりは当時11歳。しかし田岡に対してまったく物怖じせず挨拶するその姿に、田岡は尋常ならざるオーラと、無限の可能性を感じ取る。

「ひばりちゃん、このおじちゃんに歌ってくれるか」
「はい。でもおじちゃん、どんな歌を聴きたいですか」

 ひばりはどこまでも屈託なく田岡に応じ、藤山一郎が戦前に歌って大ヒットした『影を慕いて』を見事な歌唱力で歌った。ひばりの才能に感服した田岡は、「彼女を生涯にわたって守ってやろう」と固く誓う。そして自身が率いる山口組興行部、1957年に「神戸芸能社」と改名するその“芸能プロダクション”に、ひばりを誘う。

 神戸芸能社にはひばりのほか、田端義夫や高田浩吉、川田晴久など、戦後の大スターらが多数所属。しかし田岡とひばりの絆は他に類を見ないほど固く、2人の関係は“連合軍”と称されるほどだった。

関連記事

トピックス

岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン