日本のアレルギー罹患者は、今や人口の2人に1人との報告もある(2010年、厚労省調べ)。今なぜ、成人の食物アレルギーが増えているのか。そもそも小児期に発症するアレルギーと大人になってからのそれとは、原因食物が大きく異なる。その発症は突然で、子供のときにアレルギーと無縁だった人も例外なく発症する。
しかし、その症状が多岐にわたることから、アレルギーと気づかない人も多いという。原因不明の不調に悩んでいたら、実はそれは大人のアレルギーかもしれないというのだ。
独立行政法人国立病院機構相模原病院が実施した2009年から2011年の患者調査によると、成人の食物アレルギーの原因食物は果物・野菜(74件)が最も多く、全体の約30%以上を占める。そのほかには、加水分解小麦63件、小麦11件、そしてかにやえびなどの甲殻類(11件)、スパイス(9件)、ナッツ(8件)、魚の寄生虫であるアニサキス(4件)の順で続く。
野菜・果物によるアレルギーは、小麦のアレルギーと違い、摂取量が多いことが発症の原因ではない。その原因はなんと花粉症にあるという。成人の果物・野菜アレルギーの原因は、花粉症の原因アレルゲンと極めて構造が類似したアレルゲンが、果物や野菜の中にも存在することにある。
つまり、花粉アレルゲンで花粉症を発症した患者が、同時に果物・野菜の中の類似したアレルゲンにも反応するようになるのだが、これにより食物アレルギーを発症するのだ。 このような病態を、『花粉食物アレルギー症候群』と呼ぶ。
例を挙げると、シラカンバやハンノキなどのカバノキ科の花粉に含まれているPR-10というアレルゲンたんぱく質に似た物質が、りんごやももなどのバラ科の植物や大豆の中にも存在しているため、アレルギー反応が起きてしまう。
シラカンバやハンノキ花粉症の人は、りんご、もも、大豆などを食べたときに、口唇腫脹や咽頭のかゆみ、ひどい場合は喉頭浮腫、アナフィラキシーを起こす可能性がある。アレルギー疾患の専門医・福冨友馬さんはこう解説する。
「スギ花粉で食物アレルギーを誘発することはあまりありませんが、カバノキ科花粉は春に飛散する花粉で、スギ花粉の飛散時期と重複しています。症状のみではカバノキ科花粉症かスギ花粉症か判別することは難しく、医療機関でのアレルギー検査が必要です」
※女性セブン2016年4月28日号