多くの私立大学が戦々恐々としている「2018年問題」──。これは、120万人前後で推移している18歳人口が2018年から減少に転じ、2031年には100万人を下回ると予測されている少子化問題のことを指す。その影響で、赤字経営に苦しむ地方の“弱小大学”が今後バタバタと倒れていくのでは、と懸念されているのだ。
2018年を待たず、すでに「私大淘汰」の兆候は現れている。いま、全国には604校もの私立大学があるが、そのうち受験生が集まらずに定員割れした大学は4割以上の250校に上る(2015年度)。慢性的な赤字から抜け出せず、移転や廃校の決断を迫られる大学も後を絶たない。
そもそも、少子化は早くから指摘されてきたことなのに、なぜ私大は30年前の2倍にあたる600校にまで増えてしまったのか。安田教育研究所代表の安田理氏がいう。
「大学をつくるためには設備やカリキュラムなどの設置基準が設けられていますが、教育研究分野の柔軟性・専門性を幅広く認めようと1991年にその規制が大幅に緩和されました。その結果、短大や専門学校から大学への『改組』も含め、私大が増え続けていったのです。
文部科学省としても、日本の4年制大学の進学率が約51%とOECD加盟国の中では低いことを憂慮し、〈もっと高度な人材を育てて国民全体のスキルを上げなければ、グローバル社会で太刀打ちできない〉と、大学数の増加をむしろ推奨してきた経緯があります」
しかし、18歳人口の分母が増えない状況下で大学数ばかりが増え続ければ、学生獲得のためのなりふり構わぬ過当競争に陥るのは目に見えていた。
「定員割れするような大学は、生き残りのために専門学校の領域に近いユニークな学部や学科をつくって興味を引いたり、授業料さえ払ってもらえればいいと留学生や社会人を多く入学させたりしています。最近では1日も大学に行かずに卒業できる通信制大学もあるくらいです。
ここまでくると、〈こういう教育をしたい〉〈こんな人間を育てたい〉という建学の理念は保てません。そもそも志願者の適正も見ずに合格させてしまう状況が生まれている中で、文科省が目指す高度な人材など育つはずがありません」(前出・安田氏)
そして、いま私大存続の新たな切り札とされているのが、「公立大学」に生まれ変わるケースだ。