「コーヒーは濃い青。日によっては赤に見えることもあります」。テーブルの上のカップを指さし、岩崎純一さん(33才)はこう話す。群青色の雲がコーヒーカップの上を、ゆらゆらと漂って見えるというのだ。岩崎さんは「日本共感覚研究会」を立ち上げ、独自に共感覚の研究や、共感覚に関する悩みや質問に答えている。
ここまで聞いて、何を話しているかわかる人は少ないだろう。この岩崎さんのように、物や文字の上に色が重なって見える人のことを“共感覚者”という。共感覚とは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚という五感が何らかの理由でつながって感じられ、例えば目で見た物に香りを感じたり、音を聞いてそれに色彩がついて見えたり、“視覚と嗅覚”、あるいは“聴覚と視覚”といった組み合わせで、ある感覚が別の五感と共に感じられるのだ。
共感覚のうち、比較的多く見られるのが、文字に色がついて見えるというもの。例えば「あ」は赤で「い」は黄、「う」は緑というように、文字によって違う色が見えるという。
ただし、共感覚の持ち主のすべてが「あ」を赤、「い」を黄と見えるわけではなく、人によって見える色はさまざま。しかもこの“見える”という説明も、いくつかのパターンに分類はされるが、岩崎さんのように文字の上に色のついた雲のようなものが重なって見える人もいれば、頭の中でぼんやりと色ごとに特定のイメージが思い浮かぶ人もおり、その状況や程度はさまざまだ。
厄介なのは、もともと文字そのものに色がついている場合だ。例えば『女性セブン』の表紙のロゴのように、色がついた字だとする。「女性」という2文字だけとっても、岩崎さんにはその文字の色が見えながらも、「女」の字には赤紫が、「性」は偏(へん)と旁(つくり)が別々の色に見えるため、「りっしん弁」にグレー、「生」に黄の雲のようなものが重なって見えてしまうのだ。
※女性セブン2016年5月5日号