もしも、「人生最後の日」に何かを食べるのであれば、何が食べたいだろうか──。ノンフィクション作家の野地秩嘉さん(58才)に投げかけたところ、返ってきたのは「祖父と作ったほんとうのにら玉」という思い出のご飯だった。
食に関する多くの著書を持つ野地さん。今まで食べたどんな料理も比較にならないと選んだ逸品がある。
「小学生の頃、3月になって私道に植えたにらが育ってくると、祖父が作ってくれました。産みたての小ぶりの卵3個をボウルに割り入れます。私が刻んだにらを入れて混ぜ、しょうゆを入れる。炊きたてのご飯を丼によそって、ご飯があったかいうちに、たっぷりかける。そのままご飯をかっ込みます」
にらに卵の殻を混ぜたものを食べためんどりの黄身は、緑がかっていた。
「にわとりを自宅で飼っている人だけが食べられる料理です」
撮影■坂本道浩
※女性セブン2016年5月12・19日号