タックスヘイブン(租税回避地)の利用実態を記した「パナマ文書」。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の特設サイトからたどり着けるデータベースを使うと誰もが文書の中身を検索できる。ここで「Japan」を選択して表示された「Officers」899件のうち、企業名や重複を除き、ローマ字表記から日本人と推定される230人の名前を、5月16日発売の週刊ポスト(5月27日号)が掲載している。
もちろん、パナマ文書に名前があるからといって、租税回避や違法な脱税を示しているわけではない。
『〈税金逃れ〉の衝撃』(講談社現代新書)著者でタックスヘイブンに詳しい公認会計士の深見浩一郎氏は同誌上でこう指摘している。
「徴税する側の国家指導者がタックスヘイブンを利用していれば批判されて当然ですが、民間人が合法的に会社を設立している場合は問題ありません。しかし、例えば日本の企業がタックスヘイブンに設立した子会社に事業の実態がなければ、その子会社の所得は親会社の所得とみなされ、申告漏れを指摘される可能性があります」
また、パナマ文書に載っている名前や住所が「存在しない」ケースもある。
文書に名前と住所が載る都内在住の男性の元を訪れたものの、「載っていること自体、初耳。全く心当たりがない」と当惑していたケースもあったという。記載の住所を訪れても、建物が存在しないこともあった。タックスヘイブンでの法人設立に関与しているのは中国の法人が2.8万件と突出して多く、ビジネスで知り合った日本人の名前・住所を悪用しているケースも少なくないといわれる。
世界の富裕層がタックスヘイブンに持つ未申告の金融資産は2014年時点で35兆ドル(約3750兆円)にのぼるという試算もある。日本に限っても、毎年数兆円規模の税収が失われている可能性がある。
「租税回避の問題で一番重要なのは、たとえ合法的だとしても一部の富裕層や大企業だけがタックスヘイブンの仕組みを利用して税金を圧縮できるのに、財政が圧迫されるしわ寄せが、恩恵に与れない庶民に来るという不公平感です」(深見氏)
ICIJはパナマ文書の公開によって「秘密の壁」に穴を開けることが公益に資すると考え、一般の人からの情報提供を呼びかけている。今月開催される伊勢志摩サミットでも国際的な課税逃れ対策が重要議題となる予定だ。