芸能

沖縄米軍基地ネタ芸人「まず基地を感じてほしい」

キャンプ・フォスターでローラーホッケーに興じる米兵の子供たち

 沖縄の抱える矛盾を「お笑い」で表現する芸人がいる。小波津(こはづ)正光、那覇市生まれの41歳。彼がプロデュースするコントは、例えばこんな具合だ。基地の周りを人間の手繋ぎで囲む反対運動「人の鎖」──基地撤廃を掲げるおじさんはなかなか鎖が繋がらないことに憤る。体たらくの若者を叱る。

 でも、終了後には基地のお祭りに揚々と向かう……。一見、「タブー」に触れたと思ってしまう。でも地元観客からは大喝采。それは生活に根差したネタだからだろう。

 * * *
 本土の人から見ると矛盾が同居してるんでしょうね。もちろん僕たちだって基地には反対でも、基地内で働くことには憧れがある。給料がいいし休みも多くとれますから。ヘリが頭上を飛び回る。もちろんうるさい。でもそう感じる前に、ヘリが近づくとテレビの音量を大きくする自分もいる。政治的なことを考える前に体が反応する。生活の一部なんです、基地は。

 基地をネタにしようと思ったのは上京がきっかけです。東京は騒がしい町と聞いていました。たしかに人は多い。でも空を見上げたら青空が見えて静かでした。ヘリがいない。地元から離れ、初めて沖縄がわかった。僕たちの普通は、実は特別。そして、一方でこんなおいしいネタはないんじゃないか、と。

 基地を茶化すな、という人もいる。東京でチラシを配っていたら「基地を笑え、とは何事か。基地は国を守っているんだ」と叱られました。でもそれでもいい。関心を持ってもらえたということですから。小難しいことを言う前に、まずは基地を感じてほしいんです。

 そりゃ、沖縄県民としては基地をなくしてほしいですよ。でも芸人としては……。基地がある限りコントを続けられるんですよ。やはり矛盾が同居してますか(笑)。

●写真/太田真三

※SAPIO2016年6月号

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