「討死」や「謀殺」、「自決」によって英雄の最期はドラマチックに語り継がれるが、「病」に苦しみ、「病」と闘い、「病」に斃れた歴史上の人物の悩みはあまり知られていない。上杉謙信(1530~1578年。享年48)の死因は何だったのか?
仏法の守護神・毘沙門天を信仰する上杉謙信は、肉類を一切口にせず粗食を貫いていた。しかし、常に梅干しや味噌を肴に越後の酒を痛飲したという。そのため高血圧症となっていたことが類推できる。
1570年、謙信は脳卒中で倒れ左片麻痺となっている。その8年後の1578年3月、重臣たちとの酒席で便所に立った謙信は脳卒中を再発。一度は意識を取り戻したが、再び昏睡状態となり不帰の客となった。
※病名などについては『戦国武将の死亡診断書』(酒井シヅ監修/エクスナレッジ刊)などを参考に記したが、病名や死因については諸説ある。生年・没年については『コンサイス日本人名事典』(第4版/三省堂)などを参考にした。享年は満年齢を基本としたが、出生・死亡日が不祥のものは数え年で表記したケースもある。
■監修/酒井シヅ(順天堂大学名誉教授)
※SAPIO2016年6月号