中国でも「ぼったくり店」はあるようだ。ただし、飲み屋ばかりとは限らない。現地の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が解説する。
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繁華街の客引きに連れられて行った飲み屋でぼったり被害に遭った──。そんな話は世間にあふれている。だが今年5月、中国・上海市で話題になった「ぼったくり事件」の舞台は、何と散髪屋だったという。
問題の事件を報じたのは上海の夕刊紙『新民晩報』が運営するサイトの『新民ネット』(5月13日)の記事だ。
タイトルは、〈理髪68元(約1200円)の看板に騙された消費者が請求されたのは5万408元(84万4000円) 店側には50万元(約837万5000円)の罰金が〉である。
記事の内容はタイトルに記されたままであるが、問題はどうしてそんなことになったか、である。
問題となった理容院は全国に店舗を展開するチェーン店で、これまでぼったくりで話題となったことはなかったという。それなのになぜ今回のような問題を引き起こしたのか。
事件のカギとなるのは、同チェーン店の顧客に対して販売されるプリペイドカードと、その売り上げに対する従業員の取り分だとされる。
同チェーンが発行するプリペイドカードを販売する場合、販売した店には約30%が入るシステムなのだが、そのうち8%が売った本人に、21%が購入者に実際にサービスした店員に入る仕組みだという。
これは顧客を拡大するための営業戦略としてのインセンティブなのだというが、同店の店員はこの臨時収入がほしくて無理な営業をやったということだ。
何事もやり過ぎてしまうのは中国の特徴だが、当初考えていた散髪代の740倍もの支払いをさせられては、いくら気弱な消費者も黙ってはいないだろう。
最終的に店側には50万元の罰金に加えて7日間の営業停止処分が課されたという。