芸能

佐藤浩市 事象に振り回されつつ能動的に攻める芝居ができた

映画『64─ロクヨン─』で主演を務める佐藤浩市

 役者の佐藤浩市(55)といえば、20歳になる年のデビューから一貫して、舞台ではなく映像作品にこだわってきた。映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』から、主演映画『64─ロクヨン─』が、最近の日本映画においては珍しい雰囲気を放っている理由などについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 公開中の映画『64─ロクヨン─』(以下、『64』)で、佐藤浩市は主人公である警察の広報官・三上に扮する。佐藤は組織内での軋轢に苦しみながらそれを突破していこうという芝居を見事に演じていた。

「捜一(捜査一課)バリバリの現場刑事だったが、今は自分が望んでいない広報官になっているという人間なので、普通の刑事ドラマに比べても組織の重みというのは非常に大きくなってくる。

 僕自身は組織に属したことはないのですが、でも考えてみれば社会の中で生きる人間であれば90何%が部下であり上司でもあるわけですよね。俯瞰できるのは、ほんの一握り。そうなると、ほとんどの人間は組織の中で多面的なものを抱えている。多面的にならざるをえない。
 
 部下に見せる顔、上司に見せる顔……。そう考えると、僕も含めて、生きている以上は多面的になっている。そういうことでいいよねって思えたのが、三上をやる場合に大きかったです。

 僕は役をやる前に取材をするのが好きで、刑事をやるなら刑事に話を聞いてきました。でも、今回は実際の広報官に話を聞いちゃうとやりづらくなるかもしれないと思ったんですよ。三上は刑事に未練を残しながら広報官をやっているという、そういう仮住まい的な意識ですから。広報官らしくない人間が広報官をやって、最後に広報官の一義が感じられればいいかな、と。そう考えて今回は取材をお願いしなかったんです」

『64』は近年の日本映画では珍しく、役者たちが演技の火花を真っ向から散らし合い、どこかかつての日本映画に漂っていた熱い空気を感じさせてくれる。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン