国内

織田信長と比叡山延暦寺 420年の恩讐を越えた和解

420年の恩讐を越えた和解(織田信長像)

 滋賀県大津市にある比叡山延暦寺は788年、天台宗の宗祖・最澄により開山された。以後1200年間、鎮護国家の道場として法灯を守り続けてきている。

 小雨がちらつく9月12日の昼下がり、その延暦寺の一角に小さな祭壇が設けられ、ひっそりと法要が営まれた。辺りが煙るほどのお香がたかれる中、色とりどりの法衣の僧侶たちが読経し散華(さんげ、※仏を供養する際に花を散布すること)した。

 その後、延暦寺執行・小堀光実氏はこう語った。

「9月12日は歴史上、『法難』。比叡山のみならず比叡山を取り囲む地元、裾野の方々に対しても、大変な災難を迎えた日です。いまから450年も前とは申せ、後世に伝えていかねばならぬことだと思います」

 いまから445年前、延暦寺では忌々しい悲劇が起こった。それは織田信長による焼き討ちだ──。

 法要が営まれた「元亀(げんき)の兵乱殉難者鎮魂塚」は、この犠牲者を慰霊するために建てられたもの。この日は焼き討ち犠牲者を供養したのだが、それと同時に“加害者”である信長の供養までもが行なわれていたのだ。“怨み”を持っていたはずの延暦寺が信長を鎮魂するに至るまでには、一体何があったのだろうか──。

 信長が天下布武を唱え、日本統一を進めていく中で、最も残虐な行為と伝えられるのが元亀2年(1571年)の比叡山焼き討ちだ。

 元亀元年からの3年間は、信長にとって苦難の時期だった。1568年、信長は室町幕府15代将軍・足利義昭を奉じて上洛した。だが傀儡将軍であることを嫌った義昭は、密かに敵対勢力である越前の朝倉義景、北近江の浅井長政、大阪・石山本願寺、伊勢長島の一向一揆の衆らと通じ、“信長包囲網”を敷いた。

 この四面楚歌の状態を打ち破るべく、信長は反目する延暦寺の焼き討ちを企てたのだった。作家で日本史研究家の高野澄氏が解説する。

「延暦寺が信長の仇敵である朝倉・浅井連合を領地に匿い、肩入れしたということが表向きの理由ですが、信長は当時の寺社仏閣の宗教勢力が武器を持って『僧兵』となり、大きな力を持ち始めていたことに強い危機感を覚えていた。

 特に比叡山は広大な寺社領地や豊富な財力を持っており、琵琶湖の湖上運輸の実権も握っていた。また開山以来、朝廷と近い関係を結んでいたのも気に入らなかった。そのため朝倉・浅井を口実に焼き討ちを決行したのです。言い換えれば、信長は“政教分離”を求めた史上初の人物だったともいえます」

 これには家臣の佐久間信盛や武井夕庵らが「鎮守の王城を焼くとは前代未聞」と忠諫(ちゅうかん)したが、信長が聞き入れることはなかった。そして「比叡山延暦寺焼き討ち」を行ない、泣いて命乞いする僧俗3000人を殺戮したと伝えられている。以来、信長は比叡山のみならず、天台宗信徒から「仏敵」と見なされてきた。だが、冒頭で述べた通り、現在延暦寺では信長の鎮魂のために回向法要を行なっている。

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン