築地市場の豊洲移転問題は、豊洲の水から「基準値超え」の汚染物質が発見されたことで俄然注目を浴びた。だが本誌・週刊ポストは築地市場の水槽などで使われている水にも基準値超えがあったというデータを入手した。基準値(1リットルあたり0.1mg)の1.6倍の「トリハロメタン」が検出されていたのだ。築地市場で使われる水槽の水は市場内だけに供給されている「ろ過海水」だ。
メディアは「豊洲が危ない」と強調する報道に熱心だが、冷静に調べてみるとその認識とは反対の公開データも存在する。
築地でろ過海水が使われてきたのと同様、豊洲にも「ろ過海水施設」が設けられている。都は8月、築地と豊洲の取水口付近でそれぞれろ過前の海水を採水して検査を実施していた。
その検査では猛毒の「シアン」(飲用水の基準値=1リットルあたり0.01mg)が豊洲で0.002mgだったのに対し、築地では実に2倍の0.004mg。
シアンは2008年に東京ガスの工場跡地だった豊洲の土壌から基準値の860倍という高濃度で検出され、同じく4万3000倍も検出されたベンゼンとともに、巨額の土壌汚染対策のきっかけとなった物質の1つ。その物質について、築地の値が豊洲よりも高いという事実があるのだ。
また、生活排水が水中で分解される過程でできる有毒物質の「亜硝酸態窒素」(同0.04mg)では豊洲が0.09mgに対し、築地が0.27mgと3倍に及んだ。
これらの結果は9月末に公表されているにもかかわらず、どのメディアも報道しなかった。