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逮捕されても治療を受けても 薬物をやめられない理由

薬物をやめられない本当の理由とは

 成宮寛貴の突然の引退発表は薬物疑惑報道が発端だった。また、尿から覚せい剤の陽性反応が出たため、歌手のASKAが2016年11月25日に逮捕された。2014年に続き、今回が2度目だということで、ネット上では薬物犯罪を繰り返す有名人を「●年ぶり●回目」というフレーズでまとめた書き込みが人気を集める。『脱法ドラッグの罠』著者で、薬物常用者の実態に詳しいライターの森鷹久氏が、逮捕されても治療を受けても、彼らが薬物をやめられない実態をリポートする。

 * * *
 危険ドラッグ関係の取材を続けていると、その使用者は大麻や覚せい剤などほかの薬物も経験していることが多く、逮捕されてもやめられない人がほとんどである。そのため、2014年に覚せい剤取締法違反で逮捕された歌手のASKAこと宮崎重明容疑者が、また覚せい剤を理由に逮捕されたと聞き「やっぱりか」としか思えなかったのが正直なところだ。

 筆者は、2000年後半頃から危険ドラッグ(当時は合法ドラッグなどとも呼ばれていた)の取材を続けてきた。危険ドラッグは「大麻を吸った時と同じような感覚になる」事から、元々は大麻常用者だという危険ドラッグ常用者が多く存在していた。

 危険ドラッグは、この世に登場してしばらくの間は、大麻によく似た特徴を持っていた。ところが、法律によってその成分が規制される度に合法化させるため新たな薬理作用を持つ化学物質が加えられ、使用者によれば「覚せい剤に近いもの」に変わっていったという。そのため、自分自身は危険ドラッグの取材をしているつもりだったのが、気がつくと覚せい剤をめぐる様々な事情を抱える人たちも数多く取材することになった。

 筆者が取材した中の一人で、元々は大麻常習者だった主婦は、大麻から危険ドラッグ、そして覚せい剤へと常用する薬物を変えていた。

「十代の頃、クラブ仲間からクサ(大麻)をもらって吸ったのがドラッグとの出会いです。大麻は1グラム5000円から7000円程度でしたが、私の場合は一週間で1グラムを消費していました。合ドラ(危険ドラッグ)は3グラムで同じ価格、しかもキマリ方もクサに近い。ちょうどクサの仕入先に困っていた時期で、合ドラにどっぷりハマってしまいました」

 そして、彼女は大麻と危険ドラッグには大きな違いがあると気づき、常用する薬物を覚せい剤へ変えた。

「クサを吸っても性衝動は起きませんでしたが、合ドラをやっていたある時に、体がものすごく敏感になっている事に気がつきました。クサとは真反対の感覚です。以前はほとんどやった事のなかった一人での行為も合ドラをキメていれば、ものすごく気持ちがよかったんです。合ドラが規制されて入手が難しくなり、また大麻に戻った時期もありましたが、あの感覚が忘れられず、今度は覚せい剤に手を出しました」

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