国際情報

李登輝氏「台湾とアジアは日本の自立を期待している」

李登輝氏、93歳の言葉 撮影/黄威勝

 トランプ政権誕生によって最も影響を受ける国は台湾かもしれない。台湾の李登輝元総統は日本にアジアのリーダーとしての自覚を促す。

 * * *
 東西冷戦に勝利後、米国が単独覇権国家として世界に君臨するというパラダイムは、2001年の同時多発テロによって崩壊した。テロは米国の金融面にも衝撃を与え、低迷を続けた米国経済は、2008年のリーマン・ショックによって決定的な打撃を受ける。経済力の低迷は軍事面にも影響を及ぼし、もはや米国単独で世界を引っ張っていく力がなくなったのだ。

 ところが、この金融危機によって先進国と呼ばれる国々も力を失い、かわって中国、インド、ブラジルなど経済成長の著しい新興国の発言力が強くなってきた。そして、これらの新興国が加わって、ついにG20が国際情勢について議論を戦わせるようになっていく。

 こうした国際秩序の多様化は、米国のかわりにグローバルなリーダーシップを引き受ける能力と経済力を持つ国、もしくは組織がなくなったということを表している。主導的役割を果たす国家の不在、つまりそれまでのパラダイムが崩壊したとも言えるだろう。

 米国の政治学者イアン・ブレマー氏は、これを「Gゼロ」の世界と呼んだ。私に言わせれば、まさに戦国時代の到来である。

 トランプ氏の米国第一主義は、それだけ米国が国際社会に関与する余裕がなくなっていることの裏返しとも言える。こうした時代に、日本はいかに対処していくべきだろうか。

 まず言えるのは、米国との関係を平等な、対等な立場に改めることだ。これまでの日米関係は、日本側にとっては「米国に守ってもらおう」というような態度が戦後長く続いたように思える。

 安倍晋三首相が、集団的自衛権の行使を認め、国際社会における日本の責任を果たせるように整備したことに見られるように、日本自身が安全保障に積極的に関与することで、より密接で、対等な日米同盟を築き上げていかなくてはならない。そして、米国との間で、率直な対話に基づく対等なパートナーシップを築くことを考えるべきだ。日米関係の重要さを前提としつつ、日米同盟のあり方をいまこそ根本的に考え直す必要がある。

 さらに今後は、日米同盟をいかに運用していくか、日本がどのような役割を担うべきかが、改めて問われることになっていくだろう。

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン