「できるだけ早く再びお目にかかり、日米同盟の重要性を世界に発信したい」──トランプ大統領の就任に際してこう祝辞を送った安倍晋三首相だが、その裏では赤っ恥をかかされていた。
各国が競い合うトランプ大統領との首脳会談レース。日米首脳会談は2月10日に実施される見込みだが、“予選”では最初に面会して得意顔になった安倍首相は、外務省に「1月27日首脳会談」の日程を指示して“本戦”でも1番乗りに意欲満々だったという。
首相のスピーチライターとして知られる谷口智彦・内閣官房参与はワシントンで開かれたセミナーで、「1月下旬に安倍首相が再び訪問する計画が進められている。おそらくここワシントンでもトランプ氏と公式に会談することになる」と予告(昨年11月の会談はニューヨークのトランプタワー)。自民党執行部にも「1月27日か28日」の首脳会談を前提に国会日程を組むように指令が出されていた。
そのうえで、官邸は年明け早々、外交担当の河井克行・首相補佐官を訪米させ、政権移行チームに「早期の首脳会談」を働きかけ、外務省は佐々江賢一郎・駐米大使がホワイトハウス上級顧問に就任したジャレッド・クシュナー氏(トランプ氏の娘婿)らにアプローチした。
ところが、1月中旬になっても色よい返事がなかった。杉山晋輔・事務次官ら外務省幹部は記者から首相の訪米日程を質問されても困った表情で黙ってクビを振るばかりになった。
「総理は苛立って『あれだけ早くから(首脳会談の)日程を組むようにと言っていたのに、外務省はどうしてできないんだ』と怒りをぶつけていた」(官邸筋)
そこに首相の神経を逆なでする情報が舞い込んだ。大統領就任式翌日、米国の大統領報道官が英国のメイ首相との会談決定を発表したのだ。しかも、その日は安倍首相が“希望”していた1月27日。鳶に油揚げをさらわれたのである。