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タクシー業界 高齢ドライバーに頼らざるを得ない構造的問題

70歳オーバーのタクシー事故は急増

 昨今、高齢ドライバーの「アクセルとブレーキの踏み間違え」などに伴う事故が多数報じられているが、運転のプロたるタクシードライバーの中に高齢ドライバーはどれほどいるのだろうか。

 東京地区(東京タクシーセンター登録)のタクシー運転手のうち、75~79歳は「2522人」(法人1712人、個人810人)、80歳以上が「442人」(法人153人、個人289人)もいる。警視庁がまとめたタクシー(ハイヤー含む)運転手の年齢別事故件数推移をみると、全体の事故件数が年々減少している一方で、70歳以上の運転者の事故率(約16%)は10年前の3倍となっている。

 じつは、タクシー業界は高齢ドライバーに頼らざるを得ない構造的問題を抱えている。東京のタクシー運転手の平均年齢は法人約59歳、個人が約63歳で、年々上がっている。経済評論家の森永卓郎氏が解説する。

「タクシー運転手の平均年収は約300万円ほどと低いので、他にも就職先がある若年層の人材が確保できません。そのため、タクシー会社は高齢者を雇わざるを得ない。

 運転手側も、年金だけでは生活が厳しく、60~65歳で定年を迎えてもタクシーなら長く続けられるため、ますます高齢者が増えてしまうのです」

 この1月30日から、国交省は「2km700~730円」だった東京のタクシーの初乗り料金を「約1km380~410円」へと引き下げる。

 高齢者など短距離の利用者が安く乗れるようにして、“大衆の足”化を進めようという狙いだ。新料金導入で国民のタクシー利用回数が約5割増えるという調査もある。

 需要の増加を支えるには、さらに高齢ドライバーの人数を増やさなければならない事態が容易に予想される。業界も高齢ドライバー自身も、乗客の安全にとって最も重要な運転手の加齢による判断力、運転能力を冷静に判断する余裕がなくなっていくことになりかねない。

 これは個々のドライバー、あるいは各タクシー会社だけで解決できる問題ではなく、所管官庁、そして利用者のニーズも含めて考えていくべき社会問題であろう。

※週刊ポスト2017年2月10日号

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