日本は戦後70年余り、国の安全保障から貿易まで米国に依存し、「対米追従外交」がいわば“国是”でもあった。大統領交代で米国の世界戦略が大きく転換されようとしている時、安倍晋三・首相がなりふりかまわずアメリカのドナルド・トランプ大統領との首脳会談を急ぎ、フロリダの別荘まで押しかけていったのは日本の針路に危機感を募らせたからにほかならない。
欧州メディアの中でも、スペインの有力紙エル・パイスの記事の中でフランス国際関係研究所のセリーヌ・パジョン氏がそうした日本の事情を冷静に指摘している。
「安倍が考える通り、トランプと有効な関係を築くことは日本にとって死活問題なのです」
むしろ、世界に恥ずかしいのは、日米関係の将来のあり方についての冷静な分析もなく、官邸サイドのリークに踊らされて安倍首相とトランプ氏との蜜月報道を垂れ流した日本のメディアの姿勢だ。朝日はこんな記事を書いている。
〈「あなたは安倍晋三首相に従っていればいいのよ」。トランプ米大統領が長女のイバンカ氏からそんな忠告を受けたとの話を、トランプ氏が28日の日米電話会談で首相に紹介したことが分かった。首相官邸の幹部が明らかにした。トランプ氏は電話会談で、イバンカ氏が首相を「非常にクレバーな人だ」と評価していたとも話したという〉(2月1日付デジタル版)
トランプ氏が電話会談でリップサービスしたのは事実かもしれないが、これでは“安倍首相はスゴイ”というただのヨイショ記事だ。
日本のメディアは、首脳会談後に行なわれたゴルフ会談についても、
〈政府関係者によると、フロリダで安倍首相はトランプ氏の誘いに応じてゴルフをする方向で最終調整に入った〉(日本テレビ)、
〈関係者によりますと、(中略)トランプ大統領が10日のワシントンでの首脳会談の翌日に安倍総理をフロリダ州パームビーチの別荘に招待し、ゴルフに誘いました〉(テレビ朝日)
──など、トランプ氏側から誘われたと報じた。