国際情報

トランプ大統領 中国からの尖閣防衛は何も約束していない

春節中の米・中国大使館に娘イヴァンカが訪問 新華社/AFLO

 2月の「トランプ会談」によって、安倍政権は日米同盟の緊密ぶりを世界にアピールした。特に中国に対してよい牽制になった、と外務省は誇らしげである。だが、作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏は、その実効性について疑問符を投げかける。その慢心こそ、日本の国益にとってリスクなのだ。

 * * *
 米国のトランプ大統領の外交の特徴は定見がないことだ。2月13日、マイケル・フリン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が辞任した。

 去年12月29日、オバマ前大統領が、米大統領選挙に対してロシア政府がサイバー攻撃によって関与したとの理由で、米国に駐在するロシア外交官35人を追放した直後にフリン氏が駐米ロシア大使と電話していたことが1月に発覚した。

 フリン氏は「制裁問題についてロシア大使と協議していない」と主張していたが、NSA(米国安全保障局)の盗聴記録には、この主張を覆す内容があるのでトランプ大統領も守り切れないと判断して辞任させたのであろう。

 この程度のことならば、トランプ大統領が「米国の国益を擁護するためにロシア大使と協議することは不可欠だった。フリン氏が法に触れることをしたとは思わない」と述べれば、フリン氏を守ることは難しくなかったはずだ。トランプ大統領は意外と外部からの圧力に弱いことが明らかになった。この事件の結果、トランプ大統領が対露強硬論に転換するようなことになれば、米国の外交的安定性が著しく毀損されることになる。

 ◆「米中関係」の真実

 このようなトランプ大統領の定見のなさは、対中国外交においても現れている。トランプ氏は大統領選に勝利後、慣例を破り、大統領や次期大統領として初めて外交関係のない台湾の蔡英文総統と去年12月2日に電話で会談した。当然、中国は激しく反発した。トランプ氏と中国政府との間で「売り言葉に買い言葉」のような非難の応酬が続いた。

 その過程で、トランプ大統領が驚くべき発言をした。12月11日、FOXテレビの番組でトランプ氏は、「一つの中国」政策について「なぜ縛られなければいけないのか」と発言した。これにより米中関係は決定的に悪化したように思われたが、そうではなかった。

 2月8日にトランプ大統領が中国の習近平国家主席に親書(書簡)を送り、和解したいというシグナルを発したからだ。中国はトランプ大統領のシグナルに反応し、翌9日には、トランプ・習近平の電話会談が行われた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン