国内

日本国憲法の男女平等のために奮闘した米国人女性の生き様

ジェームス三木さんとベアテ・シロタ・ゴードンさん

「知恵を出し合いながら、共に困難な課題に答えを出していく。そうした努力の中で憲法改正の議論も前に進むことができる。そう確信している」

 11月17日、安倍晋三首相は所信演説でこう述べた。先の衆議院総選挙で圧勝した自民党安倍政権は、早くも“悲願の目標”に向かって突き進んでいる。政治評論家の有馬晴海氏が語る。

「安倍さんは戦争の放棄、戦力の不保持を定めた憲法9条の改正に政治生命を賭けています。緊迫したアジア情勢を打開するためには、日本が武力を持つしかないという信念を持っているし、何よりも自主憲法の制定は、彼の祖父である岸信介元首相が自民党を結党した時からの宿願。自分の手で祖父の願いを叶えたいという思いが強いんです。改憲発議に必要な衆参3分の2議席を押さえた今、近い将来、改憲の是非を問う国民投票は確実に実施されます」

 9条に自衛隊の存在を明記し、「戦争できる国」に変えるべく邁進する安倍政権だが、実は今、9条改正議論を隠れ蓑に、もう1つ改正しようとしている条文がある。それが、憲法24条だ。

《婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない》
《配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない》

 社会から男女差別が根絶されたとはいいがたいが、建前上、日本が男女平等で男女同権社会であることは、この条文によって保障されている。

 男尊女卑が当たり前だった戦前の日本から女性を解き放ったこの条文が、なぜ今、改正のターゲットにされるのか。室蘭工業大学准教授で憲法・家族法学者の清末愛砂さんが語る。

「安倍政権の中には、国家の最小基盤は家族であり、国家は家族によって支えられることで安定する、という思想が根強く存在します。国家に忠実に従う家族を必要としているわけです。それゆえ彼らには、家庭生活における個人の尊厳と両性の平等を規定し、家族内の一人一人を“異なる人格を持つ個人”として認める24条が、『国民が利己的になり、家族から離れ、国家を顧みなくなった要因』として映るのです」

 事実、法務大臣や総務大臣を歴任した自民党の元大物議員、鳩山邦夫氏(享年67)は、過去にこんな発言をしている。

「日本国憲法最大の欠陥は9条以上に24条的なもの、家族やコミュニティーというものを全く認めないところではないか」
「利己心が道徳の退廃を生み、少子化に繋がっている」

 24条が誰の手により、なぜ書かれたのか、誕生の秘話をひもとくと、“女性蔑視”の戦前に回帰せんとする現政権の真意が色濃く浮かび上がる。

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