ビジネス

専用切符で乗る行商列車 京成電鉄で生き残った理由

京成各駅で見られた行商列車に荷物を積み込む作業(2005年撮影)

京成各駅で見られた行商列車に荷物を積み込む作業(2005年撮影)

 今でこそ全国に行商専用列車は近鉄の鮮魚列車を残すのみとなったが、かつては全国各地に存在した。現在の首都圏では行商専用列車、専用車両ともに廃止となっている。ライターの小川裕夫氏が、行商列車の誕生から消滅まで、今も行商向けに定期手回り品切符を発行する京成電鉄を中心にレポートする。

 * * *
 6月2日、クラブツーリズムが主催する鮮魚列車ツアーが催行された。伊勢志摩魚行商組合連合会による貸し切りという形で近畿日本鉄道(近鉄)が運行している鮮魚列車に、一般客は乗車できない。

 鮮魚列車は月曜~土曜まで運行されているが、日曜日は運休する。クラブツーリズムが鮮魚列車ツアーを催行できた背景には、鮮魚列車の運休日だったことが理由に挙げられる。

 近鉄が運行する鮮魚列車は、三重県の宇治山田駅と大阪府の大阪上本町駅とを結ぶ。現在、国内で運行されている行商人の専用列車は、この鮮魚列車を残すのみとなっている。クラブツーリズムのツアーは鮮魚列車を観光のコンテンツとして再活用するものだが、歴史として記録に残すという側面も併せ持つ。

 流通機構の確立、道路の整備が進んだことによるトラック輸送の普及などの要因もあって、行商は日常風景から消えた。

 鮮魚列車をはじめとする行商専用列車は、日本各地で盛んに運行されていた。それは首都・東京も例外ではなかった。実際、京成電鉄(京成)は2013年まで行商人専用車を運行していた。

 行商人が乗車する専用列車は、京成では“嵩高荷物(かさだかにもつ)専用列車”という正式名称がつけられている。

「京成では嵩高荷物専用列車を1935年から運行していました。当時は、1編成まるまる行商人だけが乗車する、行商専用列車としての運行です。最盛期には1日4往復が運転され、京成上野駅方面と押上駅方面に向かう2種類がありました」と説明するのは京成の広報・CSR担当者だ。

 東京の行商人たちの大半は、千葉県・茨城県から来ていた。東京で野菜を売り歩けば儲かると評判が広まり、大正末期から昭和初期には千葉県・茨城県の農家はこぞって行商で荒稼ぎするようになる。

 1930年頃から、行商人は急増。その背景には昭和恐慌があった。昭和恐慌によって、地方では働き口がなくなったからだ。農業だったら、自力で生計を立てられる。そうした事情から行商が奨励された。実際、行商人たちの稼ぎはすさまじく、納税額も突出していた。

 そのため、朝のラッシュ時には通勤電車に多くの行商人たちでごったがえすようになる。

 通勤するビジネスマンと行商人の混乗は、トラブルも頻発した。しかし、行政当局にとって行商人は優良納税者、鉄道会社にとっても優良の大口顧客だった。そうした理由から、行商人は黙認された。

 一時代を築いた行商人と行商列車だったが、京成では利用者が減少したことを理由に1982年に専用列車は廃止。その後は、一般車両の最後尾一両を”行商専用車”として運行した。そして、1998年に押上駅方面の専用車が廃止になり、2013年には京成上野駅方面の専用車両も廃止される。こうして、京成から行商列車は姿を消した。

関連記事

トピックス

真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
優勝11回を果たした曙太郎さん(時事通信フォト)
故・曙太郎さん 史上初の外国出身横綱が角界を去った真相 「結婚で生じた後援会との亀裂」と「“高砂”襲名案への猛反対」
週刊ポスト
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン