国内

無罪になった88歳暴走運転手 控訴審で「有罪にしてください」

群馬県前橋市で起きた事故の被告が驚きの発言(時事通信フォト)

群馬県前橋市で起きた事故の被告が驚きの発言(時事通信フォト)

 母子2人の死亡を含む9人が重軽傷を負った池袋暴走事故(2019年4月)。東京地裁で行なわれた10月8日の初公判で飯塚幸三被告(89)は「車になんらかの異常が生じたために、車が暴走してしまった」と無罪を主張。旧通産省工業技術院の元院長の肩書きから“上級国民”との批判が再燃している。

 その2日前、隣の東京高裁では、同じ高齢ドライバーによる死亡事故で驚きの主張がなされた。

 2018年1月、群馬県前橋市で運転中に意識障害に陥り、通学中の女子高校生2人をはねて死傷させた川端清勝被告(88)は、一審で無罪になったにもかかわらず、この日の控訴審で代理人弁護士を通じて、

「私を有罪にしてください」と陳述したのだ。

 今年3月の一審では、被告が服用していた薬の副作用が事故の直接的原因と認められたものの、弁護側の「事故の予見は難しかった」という主張が認められ、無罪判決が下った。公判では被告に運転を止めるよう説得していたという長男が法廷で、「実刑にしてほしい」と陳述し物議を呼んだが(本誌3月27日号参照)、控訴審では被告本人まで有罪を望むことに。

「交通裁判で一度無罪になった被告が有罪を主張するのは前代未聞です」(社会部記者)

 被告の心境になにがあったのか。被告の関係者が語る。

「長男夫妻の意を汲んだ弁護士が福祉施設に入っている被告と話し合いを重ねたと聞いています。長男は教育関係の仕事に就いていて、妻も地区の班長をしている。周りからは“無罪はないよね”と陰口を叩かれ続けているとも聞きます。

 控訴審から代わった弁護士も、『無罪は加害者家族にとっても悪影響が残るだけ』という考えなので、説得を受けて被告も有罪主張に転じたようです」

 被告の意思があるとはいえ、一審で無罪になっている以上、新証拠が提出されない限り判決が覆ることは容易ではない。

 その判決は、飯塚被告の裁判と並んで、今後の高齢ドライバー問題に一石を投じることになりそうだ。

※週刊ポスト2020年10月30日号

関連記事

トピックス

元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
伊勢ヶ濱部屋に転籍した元白鵬の宮城野親方
元・白鵬の宮城野部屋を伊勢ヶ濱部屋が“吸収”で何が起きる? 二子山部屋の元おかみ・藤田紀子さんが語る「ちゃんこ」「力士が寝る場所」の意外な変化
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
《家族と歩んだ優しき元横綱》曙太郎さん、人生最大の転機は格闘家転身ではなく、結婚だった 今際の言葉は妻への「アイラブユー」
女性セブン
今年の1月に50歳を迎えた高橋由美子
《高橋由美子が“抱えられて大泥酔”した歌舞伎町の夜》元正統派アイドルがしなだれ「はしご酒場放浪11時間」介抱する男
NEWSポストセブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
STAP細胞騒動から10年
【全文公開】STAP細胞騒動の小保方晴子さん、昨年ひそかに結婚していた お相手は同い年の「最大の理解者」
女性セブン
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。  きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
年商25億円の宮崎麗果さん。1台のパソコンからスタート。 きっかけはシングルマザーになって「この子達を食べさせなくちゃ」
NEWSポストセブン
逮捕された十枝内容疑者
《青森県七戸町で死体遺棄》愛車は「赤いチェイサー」逮捕の運送会社代表、親戚で愛人関係にある女性らと元従業員を……近隣住民が感じた「殺意」
NEWSポストセブン