発行部数(年間平均)は2011年度770万部だったが、今年9月度は400万部を割り込んだ(時事通信フォト)

発行部数(年間平均)は2011年度770万部だったが、今年9月度は400万部を割り込んだ(時事通信フォト)

不動産で儲ければいい

 だが、部数が急減する一方で、意外にも経営面では“V字回復”を果たしている。2021年3月期連結決算で約442億円もの赤字を出して渡辺雅隆前社長が事実上の引責辞任をしたが、そのわずか1年後、約129億円の純利益を出し、2022年3月期決算で黒字化したのだ。

 部数が減って儲かるとは、どんなカラクリがあるのか。経済紙記者の話。

「今の朝日は不動産事業が収益の大きな柱となっています。都心の一等地に有楽町マリオンなどの複合施設や高級ホテルを持つほか、2012年には大阪・中之島にある大阪本社を建て替えて2棟建ての超高層ビルにした。新聞を軸にしたメディア・コンテンツ事業の損失を、不動産事業で穴埋めする構造なのです。朝日はデジタル、不動産、イベントを収益の3本柱にすると明言しており、有価証券報告書でも『プリントメディア事業中心の事業構造から脱却することが当社の大きな課題』と記載しています」

 そうしたなかで話題になったのが、今年8月から始まった「朝日新聞デジタル」の原則有料化だ。現在、ネットでは記事の“導入部分”しか無料公開されていない。朝日OBのジャーナリスト・前川惠司氏が言う。

「米紙ニューヨーク・タイムズをお手本にしたようですが、同紙がデジタル化で成功したのは、広大なアメリカでは紙版を届けるのに日数を要していたことが背景にある。そもそも世界的な影響力も大きい。同様の成功はあり得ないでしょう」

 人員整理(リストラ)も経営改善に一役買っているようだ。同社では2022年9月から11月にかけて、45歳以上の社員を対象に、200人以上の希望退職者を募っている。

「対象の社員には、これまで任意参加だった早期退職説明会や転職サポートの社内講習会に、必ず一度は参加するよう社内メールで通知が来ています」(50代の朝日社員)

 元朝日新聞記者での鮫島浩氏が言う。

「社の上層部から聞いた話では、メディア界のリーダーとして復活することは諦めているようです。不動産事業で黒字が出せれば、自分たちの定年までは安泰。下手に動いて急速に傾くことを恐れ、徐々に先細りする延命策を取るというのです。デジタル完全有料化は、多くの人に記事を読んでほしいという記者の原点を放棄するもの。アンチ朝日による批判や炎上を避けて、プライドを守るという内向きの選択です」

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