国内

副業的農家の平均年間所得は792万円、米農家は664万円

 農家を農業収入の割合で分類した農水省統計によると、農家総数253万戸のうち、農産物をほとんど出荷しない自給的農家が3分の1の90万戸にのぼる。副業的農家(88万戸)、準主業農家(39万戸)と合わせれば、農家の約86%が「農業収入を主たる収入にしていない農家」だ。神門善久・明治学院大学教授(農政学・経済学)が指摘する。

「小規模農家の大半は給与所得などで生活しつつ、農地がショッピングセンターなどに化けないかと転売を期待しながら片手間で農業をやっている。厳しい言い方をすれば偽装農家です」
 
 水田(コメ、麦)を耕作する農家全体の平均農業所得は年間わずか35万円しかない。しかし、「零細農家は生活が大変だろう」と思うのは大間違いだ。副業的農家の平均年間所得は792万円で、米作主業農家の664万円より豊かなのである。

「インチキ農家」は他にもいる。農水省は、年間農産物販売金額が15万円以下の場合は、農地を所有していても統計上は「農家」にカウントしない。彼らは「土地持ち非農家」という奇妙な行政用語で呼ばれ、その数は全国に137万戸だ。ただし、こうしたインチキ農家と家庭菜園を営むサラリーマンには決定的な違いがある。「自給農家」「副業農家」「土地持ち非農家」は、あくまで統計上の分類であり、税法上はすべて農家として数々の優遇措置を受けることができる。

 まず、農家は税務署による所得税の捕捉率が低く、「トーゴーサン」「クロヨン」【※注】と呼ばれる。米作農家の平均所得が35万円と低い理由は、平均売り上げ210万円のうち、175万円が経費として計上されているからだ。
 
 農作物を家族で消費する自給的農家でも、自家で食べた分を「玄米1キログラム=220円」(長野・松本市の場合)などと換算して売り上げと計算し、栽培に要した経費と差し引きして赤字が出れば、本業の給与や年金所得と合算して税金の還付を受けられる。当たり前の話だが、サラリーマンは趣味の家庭菜園に要した費用を経費にできるはずもない。

【※注】トーゴーサン、クロヨン/収入の捕捉率に業種間格差が大きいことを指す言葉。サラリーマンは10割、自営業者は5割、農家が3割といわれる。クロヨンは補足された収入のうち、課税される割合が、それぞれ9割、6割、4割であることを指す。

※週刊ポスト2011年2月11日号

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
2週連続優勝を果たした 竹田麗央(時事通信フォト)
女子ゴルフ 初Vから連続優勝の竹田麗央(21) ダイヤモンド世代でも突出した“飛ぶのに曲がらない力”
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン