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作家・市川拓司が持つ「40年前の感情が突如よみがえる能力」

 映画・ドラマ化もされたベストセラー小説『いま、会いにゆきます』(小学館)などで知られる作家・市川拓司さん(48)は、自ら発達障害であることを公表している。

 たしかに発達障害を抱える人々は、一芸に秀でた能力を持つことが多い。歴史上ではモーツァルトやアインシュタイン、ピカソらが発達障害だったとされる。日本人でも学術や芸術などの分野で多くの人が活躍する。市川さんにとってのアドバンテージは、極度の集中力と、「過去のある瞬間の心のありようが浮かんでくる」という不思議な能力だった。

「たとえば、40年前の10月3日の午後4時30分に感じていた感情が、あるとき突如よみがえってくるんです。おれにとって小説を書くとは、頭の中にある情景を再現する作業。失われた過去を書きたいという感覚が、作家となったいちばん大きな動機です。軋轢のある人間関係の中で働くよりも自分に向いていますしね」

 この能力を生かし、税理士事務所で働きながら小説家を目指した。1997年からネット上で作品を発表し、2002年に『Separation』(アルファポリス刊)でデビュー。続く『いま、会いにゆきます』は限られた時間の中、3か月で700枚という驚異的な速さで書き上げた。

「二度とできない猛烈なスピードでしたね(笑い)。究極の集中でした。ただ、無理したのではなく、最初から用意されている小説を書き写す感じでした。考えてではなく、感じて書いた」

※女性セブン2011年4月21日号

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