ゴルフを駆る徳大寺有恒氏
6月に出た『2011年版 間違いだらけのクルマ選び』(草思社刊、共著)は現在3刷4万部。『2012年版』は今年12月に刊行予定と精力的な自動車評論を続ける徳大寺有恒氏は、「クルマ遊びは男が50歳を過ぎてからが本番だ」と語る。
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僕は中学生時代からクルマを運転しているから、かれこれ60年近くもハンドルを握っていることになるね(笑い)。
成城大学では当然のごとく自動車部に入った。バイトで稼いだ金で、52年型のヒルマン・ミンクスMK2を買ったのは大学2年のときだよ。いすゞのノックダウン車じゃなく英国製なのが自慢だったんだ。大学を出てからはトヨタの専属ドライバーだった時期もあったし、ジャグアーやゴルフ……とにかく数えきれないほどのクルマに乗ってきた。
そんな僕が最近つくづく思うのは、やっぱりクルマってのは大人の乗りものってことなんだ。50歳を過ぎたらモーターライフの幅と奥行きがグンと広くなるし、深まっていく。
いや、20代ならではのクルマの愉しみだってあるんだ。何しろクルマさえあれば、女の子と必然的に二人きりになれるんだからさ(笑い)。
でも大人になれば結婚もするだろうし、子どもだって生まれる。家庭環境の変化によって、乗るクルマが変化していくのは当然のことだ。それでも、50歳を過ぎれば子育てが一段落するし、クルマ選びに自分らしさ、大人らしさを加えることができるってもんじゃないか。
落ち着き払った3ボックスのセダンなんか、若造より大人の方が断然しっくりくる。それにスポーツカーやGTカーを、若い人の専売特許だと思っているんなら、これは大間違い。MGBみたいなライトウエイトスポーツでコーナーを攻めているオヤジのカッコよさに、若い人はどうやっても敵いやしないよ。
クルマと年齢の相性はファッションに置き換えるといい。3ボックスのセダンは仕立てのいいスーツ。ロールズやベントレーのようにブリティッシュのオーセンティックなのは、まさに王道にして基本中の基本でしょ。その一方で、マゼラーティに代表されるイタリアンクラシコのスタイリッシュなセダンも捨てがたい。こういうスーツは少々値が張るけど、50歳になったら一着は持っていたいし、羽織れば大人の余裕ってやつがにじみ出るもんなんだ。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2011年7月15日号