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パワハラ認定 本人ではなく一般人がどう受け止めるかで判定

竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「出向先でパワハラを受けています」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
電機メーカーの子会社に出向していますが、勤務先の上司から人前で叱られたり、難しい仕事を与えられたりして、「パワーハラスメント」を受けていると感じている状態です。精神的苦痛が原因で出社できなくなった場合、労働災害と認定されるのでしょうか。アドバイスをお願いします。

【回答】
パワハラで精神に障害が生じた場合、労災と認定される可能性はあります。労災の対象は労働基準法に基づいて、雇い主が無過失責任を負う業務上の負傷や疾病ですから、精神的な病気も「業務に起因することの明らかな疾病」(業務起因性)に該当しなければなりません。

また、無過失責任ですから、業務自体に内在、または随伴する危険性があり、それが現実化したものとして、病気が起きることが必要です。精神障害は、外部的要因としてストレスを受けるだけで発生するのではなく、その人のストレスに耐えられない程度(ぜい弱性)との兼ね合いであり、個人差があります。工場内の事故などとは違った、難しい判断が必要です。

厚労省では精神障害が労災に該当するかどうかを、業務による心理的負荷、業務以外の心理的負荷及び個体側の要因の各事項について、総合的に判断するとしています。そして、精神障害の発症前約6か月の間に、障害を発症させるおそれのある業務による強い心理的負荷があることを必要とします。

その際考慮すべき様々な要素を挙げ、心理的負担の強度をI・II・IIIに区分します。人生の中でまれに経験することもある強い心理的負荷をIIIとし、その場合には、業務起因性を認める扱いです。

負荷の程度は、本人の受け止め方ではなく、多くの一般人がどのように受け止めるかという客観的な基準によって評価されます。仕事の失敗やペナルティ、業務内容の変化も考慮される要素です。

そこでご質問の各点が一般人を基準に、右のIIIに該当する強度の心理的負荷を与えたかが問題になります。他の人の業務内容と比べて差別的といえる困難さや、通常人なら耐えられないような人格を無視した叱責があり、その結果、精神的障害を発症したときは、労災対象になる可能性があります。

※週刊ポスト2011年12月16日号

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