芸能

小池栄子、国生さゆりらを脱がせ縛ると騙った映画Pの大迷惑

女優たちは「聞いたこともない」と言い、出資者が「カネ返せ!」と声を荒げる事件が映画界を騒がせている。官能小説界の巨匠・団鬼六氏の『花と蛇』を巡る奇妙なストーリー。有名映画プロデューサーのとんでもない迷企画とは――。

 * * *
 男は高級レストランに相手を招くと、過去に自らが手がけた映画作品のパンフレットや関係資料をテーブルに山のように積み上げ、高揚した様子で話し始めた。黒いロングの毛皮に身を包み、外には黒塗りのハイヤーを待たせたまま。その姿は、いかにも金回りがよさそうに見えたという。

「今度、映画『花と蛇』のファイナルを、国生さゆりで撮ります。国生が脱いで、ハードな緊縛シーンもやります」

 過激なシーンを頭に思い描いているのだろうか、話すほどにテンションが上がり、身振り手振りも大きくなっていく。そして、「これ、絶対いけますよ」と力を込めていうと、男は相手に映画に出資しないかと持ちかけた。提示した金額は数千万円だったという。

 確かに男にはいくつもの大ヒットを手がけてきた実績があった。国生がヌードを披露し、緊縛シーンを演じるとなれば大きな話題を呼ぶことは間違いない。人気映画シリーズの「ファイナル」となればなおさらだろう。男の自信満々な口ぶりに、出資を持ちかけられた相手は、大いに心を動かされた―。

 この出資話を持ちかけた男とは、映画プロデューサーの若杉正明氏(47)。これまで、ビートたけし主演の『血と骨』で日本アカデミー賞優秀作品賞(2004年)、『雪に願うこと』で東京国際映画祭グランプリ(2006年)、『クライマーズ・ハイ』ではブルーリボン賞作品賞(2008年)を獲得するなど、数多くのヒット作を手がけてきた人物だ。

 今、その若杉氏が、資金集めの方法をめぐって、各所からのクレームにさらされている。『花と蛇』は、昨年5月に他界したSM界の鬼才・団鬼六氏の代表的な官能小説である。1974年に谷ナオミ主演で映画化されて以来、これまでに8作が公開されている。2004年、2005年には杉本彩が、2010年には小向美奈子が主演し、過激な緊縛シーンを展開。あまりにも官能的な内容ゆえに、主演女優が決まるたびに大きな話題を呼んだ映画である。

 若杉氏はその『花と蛇』のファイナルを映画化するといっては、主演に有名女優の名前を挙げ、冒頭のように出資金を募ってきた。彼が口にした主演女優は国生さゆり以外にも、ある時は小池栄子、またある時は安めぐみ。他にも、井上和香、熊田曜子などの名前も挙げられ、元宝塚女優の月船さららの名前が書かれた契約書を見せられたという人もいる。若杉氏が名前を挙げる主演女優の名前から大ヒットを期待し、複数の会社や個人が資金を出したという。

 ところが、若杉氏が方々から金を集める一方で、映画の製作は一向に進まなかった。そして今年1月末、映像権の一部を購入したA氏が不審に思い、杉本彩と小向美奈子の『花と蛇』を製作した東映ビデオに問い合わせたところ、仰天の事態が発覚した。『花と蛇』の版権、つまり映画化権は東映ビデオが持っており、第三者には渡していないというのだ――。

 若杉氏に「映画化権は自分が持っている」と聞かされていたA氏は驚き、若杉氏に同行を求めて東映ビデオを訪れた。

「すると、若杉氏がいきなり『映画を作りましょう!』と東映ビデオの担当者にいいだしたんです。これには担当者も呆れて、『あんたに何の権利があるんだ』と罵声を浴びせ、激しい口調でいいたてました。そこで私もハッと目が覚めたんです」(A氏)

 キャスティングまで進められていたはずの『花と蛇ファイナル』は、この期に及んで何の実態もなかったことが判明したのである。巨額の資金を用立てたA氏が驚くのも無理はない。

「本当に『花と蛇』の権利を持っていたのか? と問いただすと、若杉氏は『当たり前でございます。当たり前でございます』と繰り返した。事情を説明しようとしているようだが、しどろもどろで何をいっているのかわからなかった」(A氏)

 本誌が東映ビデオの担当者に改めて事実関係を確認すると次のように説明した。「『花と蛇』の映画化権については、2010年3月1日から2013年2月28日まで東映ビデオが持っていることは間違いありません。若杉氏の件に関しては、『うちとしては非常に困ります』と本人にお伝えした。それに対する若杉氏からの返事はとくにありませんでした」

 東映ビデオは小向美奈子主演で同作品を映画化した後、続編を作ることも視野に入れて3年間の契約を団氏の生前に結び、その後、遺族にも確認をとっているという。

 しかし、映像権の一部を獲得したA氏が若杉氏と取り交わした契約書には、A氏が権利を持つメイキングビデオ用の素材を渡す納期が、今年の3月末日と記されていた。だが、映画化権を持たない作品を作って納入することなど、土台無理な話ではないか。これでは架空企画といわれても仕方あるまい。

 若杉氏は本当に『花と蛇』のファイナルを映画化しようと動いていたのだろうか。彼が出資を持ちかける際に名前を挙げていた女優の事務所に話を聞くと、

「小池にそんな話があるとは聞いていない。若杉さんって誰ですか?」(小池栄子のマネージャー)
「話はきてません。企画書をもらったこともない」(国生さゆりのマネージャー)
 
 と断言。安めぐみ、熊田曜子の事務所も同様の回答だった。また、井上和香の担当マネージャーも、「話はきてないです。よく名前が挙がっているみたいですが、ネットとかで出てるんですかね?」と呆れた様子。さらに“契約書”に名前を書かれていた月船さららの事務所に問い合わせると、

「本人は(『花と蛇』を担当するという)脚本家に会ったことはあるみたいですが、断わったと聞いています。正式なオファーはないし、主演が決まったという事実もまったくないです」

 との回答。主演女優が決まるどころか、若杉氏が正式にオファーした痕跡すらなかったのである。金を集めるために名前を利用された女優としては甚だ迷惑な話だろう。

※週刊ポスト2012年2月24日号

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