国内

小林よしのり氏 河村市長的な南京否定発言したら昔は袋叩き

 日の丸・君が代を尊重する保守派として、マスメディアに取り上げられることの多い橋下徹氏。

 だが、その愛国者としてのイメージは本物なのか。「彼の影響力が無視できなくなった」と言う漫画家の小林よしのり氏と、「保守とは言えない」と断言する京都大学大学院准教授で、『TPP亡国論』(集英社新書)著者の中野剛志氏が、「橋下徹の愛国度」を論じる。

 * * *
小林:わし、橋下徹の「維新の会」は小泉構造改革と同じ流れだから、「どうせまた改革派だろ」のひと言で済むと思っていたんだよ。しかし今は政党政治が混沌とした状態で、自民党も構造改革路線を総括していない。すると国民は橋下徹の新しさに注目してしまう。その影響力を考えると、やはり一度ちゃんと仕分けしておく必要があるね。

中野:「維新の会」の政策は、1990年代から2000年代初頭にかけて流行して失敗した構造改革の焼き直しです。「維新の会」に集まった60代や70代のブレーンが40代、50代の時から主張し続けてきた政策で、時代遅れも甚だしい。そのせいで「失われた20年」になったわけですが、たしかに構造改革の総括をしていないから、再びこれが台頭してくるんでしょうね。

小林:彼らの主張は、憲法9条改正や国旗国歌の問題、靖国参拝など、わしが過去に取り組んできたテーマばかり。で、すでに自虐史観を相対化するところまでは成功したわけ。だから、保守と称する連中がいまだにその話をしていると「まだそれが好きなのか」とウンザリするんだ。

中野:今はそれを、リスクなしで主張できるんですよ。敵が強大だった時には戦わず、先駆者が切り開いた道を勝ち馬に乗って進んでいる。

小林:昔は、河村たかしみたいな南京虐殺否定発言をしたら、袋叩きだったよ。絶対に辞任しなきゃいけなかった。「愛国心を持っている」と言うだけでも叩かれたんだから。ところが今は、愛国心を強調するほうがポピュリズムになっている。だから構造改革を進める時に小泉が保守を取り込むために取った戦法も、靖国神社参拝だった。

中野:靖国参拝をすれば、日本の市場をアメリカに売り飛ばしていいのかという話ですよね。小泉政権も民主党政権も橋下市長も、「国民に選ばれたのだから、自分の政策はすべて信任された」と言いますが、有権者は全部の政策に賛成したわけではない。たとえば「自民党にお灸を据える」という意味で民主党に投票した人は、外国人参政権にまで賛成したわけではないでしょう。

「維新の会」も同じで、「彼らは愛国心が強い」と思って投票した人は、改革路線まで受け入れたわけではない。数多くの政策を並べたマニフェストを丸ごと支持できる政党はないのですから、政策で選ぶのは無理です。だから、結局は「この人なら大局的に判断を誤らないだろう」と人品骨柄や政治手法で選ぶしかありません。橋下を「独裁的だ」と批判すると、「政策で判断すべきだ」と反論されますが、これはナンセンスです。

※SAPIO2012年5月9・16日号

関連記事

トピックス

大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン