この夏、昨年比15%以上の節電が強いられることになった関西電力管内。ほかの電力会社管内に比べて、もっとも節電の努力が求められるが、そのなかで、もっとも電力の使用量が多くなるのが大阪府だ。大阪人は、いままでに経験したことのない“節電の夏”をどのように乗り越えるのか? “大阪の県民性”という視点で分析した。以下は、県民性に詳しいノンフィクション作家・岩中祥史氏の解説だ。
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大阪は狭くて、開放感がない都市。人口密度が高く、風や空気の抜けもあまり良くないので、夏は実際の気温よりも暑いとよくいわれます。エアコンの普及率も、大阪は全国2位。ちなみに1位は京都、3位兵庫、4位滋賀と、上位はすべて関西です。それからすると、この夏の節電はかなり厳しいのではないかと、誰もが不安になるかもしれません。
ただ、大阪の人の考え方のベースは合理主義なので、これがバネになって、節電への動きにつながりそうです。電気の供給が少なくなる中でみんなが好き勝手に使ったら電力は切迫してしまう。それで困るのは自分たちなわけで、だったら、いろいろと工夫するしかないということになります。
これは、大阪がたどってきた歴史とも深く関係しています。大阪の人たちは、国際人である歴史が東京などと比べるとはるかに長い。大阪の堺は、古代から中国大陸や朝鮮半島から多くの人が訪れ、15世紀末から17世紀初めにかけては、日明貿易、南蛮貿易などによって栄えるなど、国際交流の要所でした。外国人と頻繁に接していましたから、日本的な理屈だけでは物事が進まないことをよくわかっている。欧米風の合理主義や自己責任を重んじる考え方が浸透していったわけです。
もともと、“お上”にいわれて何かをするというのは大嫌いで、権力や権威を受け入れるのをよしとしない人が多い。だから、政府が決めたからとか、関西電力にお願いされたから節電をするという図式にはなりにくい。だったら、それぞれが自分の判断にしたがって節電をしようということになる。自主独立の気風とでもいいますか。
夏の節電のメインはやはりエアコン、つまりは暑さ対策でしょう。だったら、大阪人の身上といってもいい笑いで暑さを吹き飛ばしたれや、ということになってもおかしくありません。節電そのものを笑いのネタにしてしまうぐらいのバイタリティーがありますからね。お笑い芸人も一般の人も、電気が使えなくて大変だとぼやいてもしょうがないわけですから。これを機に、いままで思いつかなかった生活のアイデアが生まれる可能性もある。なんでも楽しみに変えてしまえる大阪人ですから、節電だって同じなんじゃないですか。
東京だったら、節電のアイデアを競い合うとか直線的な方向にいくでしょ。でも、大阪はそういうことにはならないと思います。生活力とか気持ちの余裕という部分では、大阪人の方が東京なんかよりはるかに上を行っていますから。大阪人はこの夏、“楽しい節電生活”を心ゆくまで謳歌すると思いますよ。