中国人の女性留学生のブログをきっかけに、「割り勘」論争がネット上で6月上旬に勃発した。日本人の彼氏との初めてのデートで割り勘だったことに、彼女は違和感を覚えたというのだ。 この割り勘問題、海外ではどうなのか。
男女の収入格差がなく、平等意識も強いヨーロッパでは、むしろ「おごりが失礼」な場合も多い。欧州全土から観光客が集うスペイン・バルセロナのナイトクラブで聞き込み調査をしてみた。まずは今日知り合ってカップル成立目前という男女。
「女性がカネをもっていれば払えばいいし、僕が多く稼いでいれば僕が払うべき。状況次第だろ」(27歳フランス人男性)
「クラブで男性にナンパされたとしても、私は割り勘をまず提案するわ」(29歳スペイン人女性)
男性が次のビール代を払うというと、女性が「その次は私が払うわ」と笑い、二人は消えていった。
続いて34歳のスペイン人女性は、こうきっぱり。
「私は、これまで付き合った男性とはすべて割り勘でやってきた。それは多分、女性でも経済的にやっていけることを証明したいから。それが男女平等を示すための手段だと思う」
ところが、紳士の国、イギリスでは事情が違う。割り勘のことを、かつてライバル関係だったオランダを引き合いに出し、「go Dutch」(ケチなオランダ人)と揶揄するのだ。22歳の男子学生はこういう。
「イギリスの伝統的な考え方かもしれないけど、絶対に女性に払わせたくないし、女性もそれを求めている。ディスコで僕が一杯おごるからといってカウンターに連れて行って、グラスを渡したらバイバイ。これがすごく多いんだけど、女を引っ掛けておいて、おごらないわけにはいかないんだ」
アメリカも似ている。テレビ局と女性誌が7万人を対象に行なった調査では、57%の女性が最初のデートであっても常に支払いを申し出ると回答しつつ、34%はそれを男性が受け入れるのに違和感がある、という。建前では男女平等といいつつ、本音ではおごってもらいたいというわけだ。
最後に話を聞いたアフリカ・モロッコから来た27歳男性は、そうした価値観の違いに悩んでいる様子。
「モロッコでは男がおごるのが絶対だけど、スペインやフランスに来ると、相手の女性におごろうとして引かれることが多いんだ」
男女の経済格差や平等意識の違いによって、国ごとに「割り勘」の考え方は全く異なるようだ。
※週刊ポスト2012年6月29日号