昨年の震災以降、節電意識の高まりや、企業のサマータイム導入により、早寝早起きの生活様式が定着しつつある。そこに生まれる“需要”を逃すまいと街で活況をみせているのが「早朝ビジネス」。その最前線をレポートする。
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通勤客の影もまばらな平日の朝7時すぎ。東京臨海高速鉄道りんかい線の品川シーサイド駅に隣接するスーパー、イオン品川シーサイド店の食料品売り場は、早くもビジネスマンやOLで賑わいはじめていた。
彼らが購入していくのは朝食や昼食用のおにぎりや弁当、お茶などのペットボトル飲料。セルフレジでサクサクと精算をすませ、店を後にする。入れ代わり立ち代わり、客足が途絶えることはない。
「朝食用におにぎりを買った。朝9時までは早朝割引で5%引きだから、おにぎりが1個93円。コンビニより20~30円は安いからいつもここを利用しています」(20代・男性会社員)
近くに住む60代の主婦もこの店の常連だ。
「早朝営業が始まってからというもの、近くの公園でラジオ体操をした後、散歩がてらここに寄るのが日課になってます。値段も安くなっているし、スタンプをためるとギフトカードももらえる。食料品を買うなら絶対に朝がお得」
客層はビジネスマンが6割、シニア層が4割といったところだろうか。
「6月1日から随時、朝9時の開店を7時に繰り上げました。全国の『イオン』各店舗とスーパーマーケットの『マックスバリュ』『まいばすけっと』をあわせた全国約1400店舗で実施しています。正午までの午前中で比較すると、早朝営業の導入によって売り上げは前年比で5%伸びている」(イオン広報)
住宅街にあるイオンでは、子供を学校や幼稚園に送り出した主婦がその足で来店し、「無駄な時間がなくなった」と好評だという。気になるのは早朝営業に伴う人件費などのコストだが、その点についても、
「レジを全部は開けなかったり、セルフレジを導入することで、レジに従業員が1、2人いれば大丈夫なシステムになっている。朝早くから揚げ物や刺身まで並べることはないし、上手にシフトを振り分ければ従業員の負担が増えることはない」(前出・イオン広報)
この早朝営業は「とりあえずは9月2日」で終了するが、現時点でかなりのニーズがあるため、継続も検討中だという。
※週刊ポスト2012年9月7日号