スポーツ

村田兆治氏 「川崎球場は今思い出してもとんでもない球場」

 今はなき昭和の野球場をたどるこのコーナー。今回は、かつてロッテ・オリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)が本拠地を構えていた川崎球場の思い出を、当時のエース・村田兆治氏が振り返る。現在の千葉ロッテの本拠地・QVCマリンフィールドには連日多くの観客が訪れているが、当時の川崎球場は常に閑古鳥状態。村田氏はこう語る。

 * * *
 大変な球場でしたよ。汚い、(ヤジが)キツイ、(打たれると狭いから)危険という、「3K球場」でした。ロッカールームの湿度が高いので、落合(博満)はロッカーにバットを入れなかったし、ボクも予備のグラブを自宅に持ち帰っていましたね。カビが生えるから。

 観戦する側としては、この球場ほどプロ野球の醍醐味を味わえる場所はなかったと思う。ブルペンがスタンドから間近に見ることができるから、ブルペンキャッチャーのミット音が響き、プロの投手の球がいかに速いかが伝わる。投手が打たれるとブルペンが慌ただしくなるなど、ベンチ裏の雰囲気も伝わってくる。選手たちの息遣いが聞こえる球場でしたね。

 当の選手は苦労していましたよ。特に投手は、外野に膨らみがないから失投が本塁打になってしまう。気まぐれな浜風に乗ってよく飛ぶんです。グラウンド自体が狭いから、ファールで打ち取ったはずが、スタンドに入ってバッターにもう1回チャンスを与えてしまう。仕切り直しした球が本塁打、なんてこともよくありました。

 だからこそ1球も気を抜けないし、配球やコースなどを意識しました。風を読み、打者心理を読んで配球を組み立てる。投手能力を磨かせてくれた球場でしたね。

 打ち取るにはインコースの厳しいところに投げなければならない。少しでも甘いと本塁打になるし、厳しすぎるとデッドボールになる。ぶつけたら、相手が報復してきていました。西武の東尾なんか、頭に投げてきましたからね。するとベンチから監督が飛び出して乱闘になる──今思い出してもとんでもない球場でしたね(笑い)。

※週刊ポスト2012年9月14日号

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン