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2012.10.15 15:59  週刊ポスト

都内のヌード劇場の常連 朝10時から夜10時半まで目を凝らす

 人間の欲望と感情はどこか奇妙な連関を見せることが少なくない。作家の山藤章一郎氏が上野のヌード劇場を訪れた。以下、同氏のレポートだ。

 * * *
「あのさあ、まんこばっかじゃ、だれのか分かんないじゃん。あたしの顔も撮ってよ」

 裸のお嬢様が40過ぎたほどの人物の肩をはたく。人物は応える。

「んなこといって、会いに来られるまんこって、ここしかねえし」

 都内のヌード劇場の〈撮影タイム〉──人物は、顔も背格好もねずみに似た押しの弱そうなサラリーマン風情である。お嬢様はファッション誌に登場するモデルより美貌の、瞳の大きなH嬢。

 H嬢はさっきまで、尻、腰、大腿をのの字、くの字に、くねらせ、ついで、足を高々と上げ、股間を晒していた。

 そのたびに舞台の下の人物たちは、開脚するお嬢様、30センチに満たぬ近接点まで顔を寄せるのに多忙をきわめた。撮影タイムは、そうして開脚が終わった後である。H嬢、こんどはピンヒールを履き、透けた布一枚の恰好で現われた。

「1枚500円、みなさん、たくさん撮ってね」

 最初にデジカメを渡された人物が、まんこばかり撮っては駄目だと窘められたねずみだった。ねずみはポケットから取り出した千円札をお嬢様に差し出す。

「ありがとう、また、いつもの恰好?」互いに馴染みだったか。

 ねずみ、強く、首肯する。お嬢様、仰向けで開脚し、左右の指で押し広げ、股間を露呈させた。ねずみ、鼻の頭を最接近させる。アップを1枚と、もう1枚少し離れて撮る。

「撮れた?」「うん」「よかったね」「うん」「このまんこ、好き?」「うん」お嬢様とねずみの至福に満ちた会話。

 そして握手。このあとねずみは、バックヤードでプリントアウトされた写真を受付で受け取る。

 30人ほどの収容に、30、40歳代が半分、あとはその上とシルバー。入場料5000円。食事の外出も許可され、朝10時から夜10時半までいられる。そのあいだに、4回の公演。5人の出演。

 人物たちは、そうして朝から晩まで20回、目を凝らし、レンズに熱気を託す。

 某日。なかにはこんな人物もいた。――〈ぞうきん殿下〉。

 赤い大きな羽根で巧みに体を隠しながら踊るお嬢様がいた。動くたびに、舞台のゆかに羽根のかけらが飛ぶ。ゆかを走り回ってそれを拭き取る〈ぞうきん殿下〉。

 客もお嬢様も気を散らすが、苦情を言い立てる者はいない。

 30手前の殿下はそしてときどきぐっとお嬢様の股間に顔を寄せ、また黙々と作業に戻る。

 ひと昔前ではない今、手近なパソコンの画面に、女たちの性器は溢れている。それでも男はなぜもっと女の股の付け根を見たいのか。当方も撮らせて戴いた。レンズに湿りが立ち昇ってきた。

「うまく撮れた? よかったね」お嬢様に声をかけられて、気持ちが浮き立った。

※週刊ポスト2012年10月26日号

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