西川文二氏は、1957年生まれ。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導している。その西川氏が、犬が飼い犬氏に似るワケを解説する。
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確かに、世の中では、飼い主にクリソツな、いや失礼、そっくりな犬が結構いる。長いこと不思議だね、不思議だね、って思ってはいたが、動物の行動の面白解説の名人、竹内久美子女史が、その明快なる理由を数年前に著述してくれた。
我が輩の解釈も加味して噛み砕いていえば、要は赤ちゃんの時代に可愛がってくれた相手の顔が、人間の脳にはすり込まれていて、それに似た顔に好意も持つ。で、そのすり込まれている顔ってのは、通常は親兄弟。で、親兄弟に似ている顔に好感を感じ、惹かれてしまうってこと。
そう、正確には似てるのは飼い主ではなく、飼い主の親兄弟。親兄弟は飼い主に当然似てるんで、結果的に、飼い主にも似てるってこととなる。
そもそも、自分に似ている相手は、同じような遺伝子を持っているはずで、その相手との子孫を残すことは、遺伝子的にはプラス。で、遺伝子の戦略として、自分と似たパートナーを選ぶ傾向がある。
アソータティブ・メイティングっていって、人間でもよく似た夫婦がいたりするけど、それはまさにコレ。ま、コレが、犬というパートナー選びにも、少なからず影響を与えているのかも、ってこと。
かくいう私めもよくいわれる、似てますねって。それも、前の犬のときは、その犬と。今は今で、今の犬と。その2匹は決して似てない。前の犬はオヤジに、今の犬はおばあちゃんにでも似てるのかしらん。よくわからんけどね。
この話をかつて、雑誌「いぬのきもち」の編集者にしたところ、エライ受けましてね、「この犬の飼い主は誰だ?」みたいな、クイズ調の特集をやったことがある。
これが見事にわかるんですな、犬と飼い主の組み合わせが。それはもう、お見事って感じでね。ところで、貴兄のところはどう?
※週刊ポスト2012年10月26日号