竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「パチンコ店の駐輪場でパンク。店側に責任を取ってほしい」と以下のような質問が寄せられた。
【質問】
パチンコ店に行った時のことです。その店の駐輪場に自転車を置いていたのですが、終わって帰ろうとしたら、自転車をパンクさせられていました。明らかにイタズラです。店に文句をいったところ、注意のしようがないといわれました。しかし、店の駐輪場での出来事です。修理代を請求できませんか。
【回答】
駐輪場の状況によって違います。店先か、そうでなくても簡易な雨除け程度しかないような駐輪場であれば、無理でしょう。パチンコ店に預ける形態の駐輪場ならば、責任追及できると思います。駐輪場に駐輪させることで店が寄託を受けたことになれば、保管する責任が生じます。この点、青空駐輪場では預かったというのは困難です。
ガソリンスタンドで給油注文後、所用で立ち去った客の車をスタンドの従業員が、給油後邪魔にならない位置に移動しておいたところ、夜間盗難に遭ったという事件がありました。客は寄託したと主張しましたが、裁判所は、預かるという合意はなく、「自己の支配領域に他人が物を置くことを許容したのみでは寄託を受けたことにはならない」と判断しています。青空駐輪でも同じことがいえそうです。
商法第594条では、「旅店、飲食店、浴場其他客ノ来集ヲ目的トスル場屋ノ主人ハ客ヨリ寄託ヲ受ケタル物品ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其不可抗力ニ因リタルコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス」と規定し、飲食店のように客が集まる店は、寄託を受けた物の保管責任は原則免責されないとしています。
場屋の例としては、ゴルフ場でキャディに預けたゴルフバッグが紛失した事件で、ゴルフ場を場屋とした裁判例もあります。パチンコ店も場屋にあたります。しかし、ここでも寄託の成否が問題です。
寄託が成立するためには、店と客との間で、店がその物を保管するという合意の下に受け取るという行為がなければならないと解されています。そこでパチンコ店が駐輪場で来店客の自転車をいちいち預かるようなシステムになっていれば、まさにこの規定が適用され、パンクという毀損に対して、不可抗力でない限り、店は損害賠償責任を負うことになります。
※週刊ポスト2012年11月9日号