国内

利用者数わずか28万人の財団法人らがプラチナバンドを占拠

 プラチナバンドは、スマホの「つながりにくい」問題解決の特効薬にはならなかった。原因は不透明な電波の割り当て方式で成り立つ既得権にあると、通産省で渡辺喜美・行政改革担当大臣の補佐官を務めた政策コンサルティング、政策工房社長の原英史氏が解説する。

 * * *
 新周波数帯を割り当てられても、実際にはすぐに使えず既存事業者との交渉が終わってから、というプラチナバンドのような事態が続く背景には、やはり役所の絡んだ既得権の存在がある。

 非効率な割り当ての事例としてよく取り上げられるのが、財団法人移動無線センター(2012年4月から一般財団法人に移行)だ。この法人はタクシー無線など業務用無線の周波数をまとめて管理する団体で、従来からプラチナバンドの周波数帯を持っていた。

 今般の周波数再編で同じ900メガヘルツ帯の中の別の帯域に移ることになり、先に触れた「立ち退き交渉」の対象のかなりの部分は、この法人の管理下で業務用無線を使っている事業者だ。

 ただ、利用者数はわずか28万人で携帯電話の利用者数とは文字通りケタ違い。しかも業務用無線の果たしてきた役割の多くは、現在では携帯電話で代替することが可能だ。2011年の「提案型政策仕分け」でも指摘されたが、このセンターは天下り法人(仕分け時点では理事長、専務理事、常務理事のトップ3人が総務省OB)であり、そこに権益を与えてきた面があったのではないか。

 たとえて言えば、都心の一等地に天下り法人が平屋を立てて低層利用し、高層ビルを建てて土地を何百倍にも有効利用できる民間業者が割を食っているようなものだ。

 一応、総務省もオークション方式を未来永劫導入しないと言っているわけではない。

「周波数オークションに関する懇談会」報告書では、第4世代携帯からの導入方針を表明。2012年3月、オークション導入に向けての電波法改正案も提出した。

 しかし、3.9世代の割り当ては先述の通りこれと切り離して比較審査方式で行なわれ、法案もその後成立に至る気配がない。理由は総務省が後ろ向きだからと言うしかない。総務省は「裁量権」を手放したくないのである。

 現状の電波利用料も、総務省にとって都合がよい。総務省は電波を割り当てた事業者から年間718億円(2011年度)の電波利用料を得ているが、この収入は国民に広く還元されない。

 特別会計ではないものの、電波法上、使用目的が制限され(103条の2第4項)、いわば総務省が“ヤミ特別会計”のように自らの財布として使えるようになっている。例えば、周波数変更に伴うアナ・アナ変換対策として、社団法人・電波産業会が1600億円を独占受注したが、これもまた天下り法人だ。

 オークション導入はこうしたヤミ特別会計にも光を当てることになるのだが、遅々として進まない。

※SAPIO2013年1月号

関連記事

トピックス

12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
スポーツアナ時代の激闘の日々を振り返る(左から中井美穂アナ、関谷亜矢子アナ、安藤幸代アナ)
《中井美穂アナ×関谷亜矢子アナ×安藤幸代アナ》女性スポーツアナが振り返る“男性社会”での日々「素人っぽさがウケる時代」「カメラマンが私の頭を三脚代わりに…」
週刊ポスト
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン
再婚
女子ゴルフ・古閑美保「42才でのおめでた再婚」していた お相手は“元夫の親友”、所属事務所も入籍と出産を認める
NEWSポストセブン
54歳という若さで天国に旅立った中山美穂さん
【入浴中に不慮の事故】「体の一部がもぎ取られる」「誰より会いたい」急逝・中山美穂さん(享年54)がSNSに心境を吐露していた“世界中の誰より愛した人”への想い
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《真美子さんのバースデー》大谷翔平の “気を遣わせないプレゼント” 新妻の「実用的なものがいい」リクエストに…昨年は“1000億円超のサプライズ”
NEWSポストセブン