4月から改正高年齢者雇用安定法の規定によって、会社は雇用延長の制度をつくり、社員が希望すれば65歳まで雇用しなければならなくなる。事実上の「65歳定年制」が始まる。定年延長問題に詳しいジャーナリスト・溝上憲文氏が語る。
「大企業の多くはグループ内に人材派遣会社を抱えている。定年後に社員を派遣会社で再雇用し、元の職場に派遣するわけです。派遣社員ですから本社の新人にも気を使わなければならない。
うまく割り切ってコミュニケーションできる人ならいいが、元部下の上司との関係がぎくしゃくして職場に不協和音が出たりしています。とくに元部長など管理職には耐え難い部分もあるでしょう。後輩の部長や課長も会社に元上司が残っているとやりにくいことが多いから、会社側に元上司の異動を求めることも珍しくありません」
ある企業では、人事部長が定年で別の部署の経理担当庶務として派遣され、元部下のさらに部下から、「こんな経理もできなかったんですか」といわれて即、退職したケースもある。
営業マンも意外につぶしがきかない。あるメーカーの営業マンはこう語る。
「長く現場を離れて資材管理に回されていた元課長が再雇用で古巣の営業部の助っ人にやってきた。取引先の専務とは旧知の仲らしく、『○○さんはオレが営業にいたときはまだ課長だったのに、いまや専務か。今度ゴルフでもセッティングして紹介するから』と自信満々だったが、一緒に挨拶に行くと相手の専務はゴルフより、しっかりした企画書と会議でのプレゼンを要求。接待しかやってこなかった元課長は企画の説明ができない。課内の若手から全然使いものにならないと相手にされなくなった」
そうなると、“針のむしろ”である。
※週刊ポスト2013年2月8日号