冠番組を持つわけじゃないし、好きな芸人ランキングで上位にいくわけでもない。それでも人気バラエティー番組に、必ずといっていいほど出ているのが土田晃之(40才)だ。自らを「サラリーマン芸人」と呼び、“一番にはなりたくない。二番手、三番手でいい”と公言しているが、そこには生き馬の目を抜く芸能界で生き残る、彼なりの“戦略”があった。お笑い評論家のラリー遠田氏に聞いた。
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土田さんは、自分が人の上に立ったり、リーダーになったりするタイプではないというのをわかったうえで、そんな自分がお笑いの世界でどうすれば生き残っていけるのかということを考えて、淡々と実行し続けていると言えます。
ひな壇芸人の中でいちばん仕事ができるということから“ひな壇の神”と呼ばれていますが、ひな壇では、芸人さんが並んでいて、それを仕切るMCの人がいて成り立っていますよね。土田さんは、そのMCによってスタイルを変えるわけです。
例えば『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)では、さんまさん自身が笑いを取りに行く得点力、決定力があるので、土田さんはそれをサポートする役割に徹する。投げられたボールを確実に返していき、最後にさんまさんがシュートを決めて大きな笑いが生まれればそれでいいというポジションです。『アメトーーク!』(テレビ朝日系)では、雨上がりさんが引いたところにいるので、自分を含めてひな壇に並んでいる芸人がエピソードトークで笑いを取らないといけないから、そういう時はむしろミッドフィルダー的な立ち位置で、状況に応じて得点を決めにいく。
つまり、番組、MCによって、そして、共演者が誰かということで、自分のスタイルを使いわけることができるから、いろんな番組に起用されるのではないでしょうか。
土田さんって、わりと“弱点”もあるんです。例えば、ネタをやらないし、コンビを解散してからコントをしていない。それほど社交的じゃなく て基本まじめな人だから、自分自身の失敗談もあまりなかったりする。だからそれをカバーするために、竜兵会で上島さんといつも一緒にいて、上島さんが酒の席で失敗したとか、変な発言をしたとか、面白エピソードを拾ってくる。自分自身が羽目をはずすタイプじゃないから、その弱点をカバーするために、こういう天然キャラの人のエピソードをネタにして面白トークにしているんです。
土田さんの欠かせないキャラとして、家電、ガンダム、アイドルなど、オタクなイメージがありますが、元々、たくさん本を読んで知識を吸収するというタイプではなく、基本的にはマニアックに走る人ではないと思うんです。パソコンも使えないそうですし、ネットショッピングもしたことがないというくらいの機械音痴の面もあるんです。でも、そうしたイメージはあまりないですよね?
それは、家電、ガンダムでもそれを知らない人にも面白い切り口で話せるから、その分野に詳しい人だと思ってもらえるんです。その道に誰よりも精通した真のマニアじゃないけれども、テレビに必要な最低限のキャラクターというのを全部押さえている。そこを外さないから、番組のオファーが続くし、仕事が減らないんです。
土田さんは自分でも仕事をセーブしていると言っていますが、あくせく働きたくない、家庭も大事だし、俺はそこそこでいい、というのをずっとキープしている。計算して着々と自分のポジションをつかんできているから、“このくらいやれば芸人として長く続けられる”という仕事のスタイルを確立できているのかもしれません。