ライフ

日本人の花見 そのルーツは奈良・吉野山のヤマザクラにある

吉野山に咲くヤマザクラ

 今年の桜はどこで見るか、と思案している人も多いだろう。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏の指摘は、きっと参考になる。

 * * *
 この週末、一気に花見シーズンに突入。花見といえばソメイヨシノ。葉が出る前に満開になり、見た目がとても華やか。でも、それは「新しい花見の感覚」です。と言われたら、あなたは驚きませんか? そもそも、日本の花見のルーツは別の桜にあった、としたら?

「花と葉が一緒に出るヤマザクラを愛でる感性に、日本人の花見のルーツがあった」

 西行の研究者であり『感性の哲学』等の著者、桑子敏雄東工大教授は、花見について取材をしていた私にそう教えてくださいました。

 葉と花が一緒に出るという、あいまいさに美を感じとる。あわい色、やわらかな色彩の融合を喜ぶ。境界のあいまいな美を愛でる。それが、日本的な感性というものらしい。

 そうした感性にフィットする桜は? ヤマザクラです。つまり、「日本的花見」のルーツは、ヤマザクラの宝庫、奈良県の吉野山にある。

 歴史を振り返っても、「吉野山の桜風景」はたびたびゴージャスな屏風絵に描かれてきました。屏風だけでなく、たとえばこんな焼き物にも見られます。重要文化財、野々村仁清の「色絵吉野山図」茶壺には、やわらかな吉野の山の合間に咲き誇るヤマザクラの景色がいきいきと立体的に描き出されています。吉野の桜は、春の代表的な画題。まさしく日本人の美の原点であり、よりどころでした。 

 ということで、ソメイヨシノもいいけれど、日本人なら一度は見てみたい、吉野山の桜満開の風景。

 もう一つ、見ておきたい個性的な桜といえば……400年以上前、豊臣秀吉が開いた宴『醍醐の花見』の現場ではないでしょうか。

 京都の中心から電車で南へ20分ほど。山科にある醍醐寺の境内で、吹雪のように花びら散らす巨大なしだれ桜。秀吉が鑑賞した桜の子孫です。しだれ桜がクローンとなって現代に甦っているのです。秀吉もこの季節に、この場所で、この風景を楽しんだのだ--と想像すると、タイムマシーンで桃山時代に戻ったかのような不思議な気持ちに包まれますね。

 ぜひ、歴史の記憶を凝縮したかのように激しく咲きほこる醍醐寺のしだれ桜、是非ご堪能いただきたいもの。

 この季節、ソメイヨシノが散ったら「花見は終わりました」「花は散りました」と、口をそろえる日本人。ソメイヨシノしか桜ではないかの語り口にムッとしているのは、八重桜も同様でしょう。

 ソメイヨシノが散る頃、いよいよ開花し満開を迎える八重桜。名所はこれまたあちこちにございます。東京でいえば、たとえば新宿御苑の「フゲンゾウ(普賢象)」はいかが? 花の中心から二本の雌しべが突き出ていて、まるで「普賢菩薩が乗った象の牙に似ている」ということでその名前がつきました。個性的でしょ? 

  その他、新宿御苑にはクリーム色のウコン(鬱金)桜や、緑の花をつけるギョイコウ(御衣黄)など、珍しい色の花もズラリ。今年の大河ドラマは『八重の桜』ですから、ちょっと違った花見を堪能するのもまたオツな遊びになるのではないでしょうか。

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
大河撮影前に2人で北海道旅行をしたという(時事通信フォト)
吉高由里子、セレブ恋人との結婚は『光る君へ』クランクアップ後か 交際は事務所公認、大河スタッフも“良い報告”を楽しみに
週刊ポスト
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン